てぃーだブログ › 元は、関組長の東京・永田町ロビー活動日記【ブログ版】 › 法務委員会 › 他の国の【共謀罪】はどうなっているのか?

2006年04月04日

他の国の【共謀罪】はどうなっているのか?

メルマガの読者から、このようなご教示をいただいた。

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関組長さま

----- Original Message -----
Sent: Monday, April 03, 2006 11:09 PM
Subject: 関組長日記:<国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約>について


> 現在この条約の締約国は現在、118カ国ある、とのことなのですが、
>
> ● この条約を批准するために新たに法整備をした国はどこか?
>
> ● それらの締約国は、どのような国内法整備をしたのか?

http://homepage3.nifty.com/kinohana/kyobo.html
「危ないぞ!共謀罪」(小倉利丸、海渡雄一著、樹花舎、2006年2月)
の30~31ページに、

2005年10月21日の法務委員会で、民主党の平岡議員がこの件で
質問、小野寺大臣政務官が答弁しています。
結論としては、欧米先進国では大きな法改正をした国はない

旨の記述があります。

なお、上記書の付録CD-ROMに、「共謀罪に関する主要諸外国に
おける関係法制」が納められています。

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そこで、国会会議録検索システム( http://kokkai.ndl.go.jp/ )で会議録を検索して
読んでみた。

平成17年10月21日(金曜日)衆議院/法務委員会
    
委員長 塩崎 恭久 君 http://www.y-shiozaki.or.jp/

法務大臣    南野知惠子 君
法務副大臣   富田 茂之 君
法務大臣政務官 三ッ林隆志 君
外務大臣政務官 小野寺五典 君
   
政府参考人
   
大林  宏 君 法務省刑事局長    
長嶺 安政 君 外務省大臣官房審議官 
辻   優 君 外務省大臣官房参事官 
神余 隆博 君 外務省大臣官房国際社会協力部長
小菅 修一 君 法務委員会専門員   
   
~前略~

○塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。
○平岡委員 民主党の平岡秀夫( http://www.hiraoka-hideo.jp/ )でございます。
 きょう、私は、条約刑法の中でも国際組織犯罪防止条約に関連する法案の質問を中心にやらせていただきたいというふうに思っておりますけれども、冒頭、中身に入る前に、我々としては、この法案を審議するに当たっては、やはり条約の交渉経緯というものがしっかりとわからないと充実した審議ができない、場合によっては、そうした交渉経緯によってこの法案のあるべき姿というのが違ってくるのかもしれない、こういう視点でいろいろな資料提出を要求してきたところでございます。
 しかし、残念ながら、こうした私たちの要求に対しては、ある程度の概要を説明したペーパーはいただきましたけれども、我々が望んでいるものとはほど遠いものでしかなかったということで、大変残念であるとともに、我々としては、引き続きこうした資料の開示を要求していきたいというふうに思っております。
 そこで、まず最初に、その資料の中でも最も重要であると言われている公電の関係でありますけれども、国際組織犯罪防止条約、ちょっと長いのでこれからTOC条約というふうに略称させていただきますけれども、これに関するアドホック委員会第七回会合、第九回会合、そして第十回会合に関する公電を開示するように求めたいと思います。よろしくお願いします。ぜひ開示していただきたい。
○小野寺大臣政務官 ただいま御指摘の公電のうち、非公式協議に関する公電全体及び非公式協議の内容を記載した部分については、公開しないことを前提という条件のもとで各国が行った発言が記載されております。このような性格の文書を開示した場合には、他国との信頼関係が損なわれるおそれがあります。開示していませんが、それ以外については既に開示してきたと思っております。
 なお、不開示部分も含めた条約の審議過程につきましては、本条約に関係する法案の御審議のためという事情も踏まえ、本年七月八日及び十月十九日の法務委員会理事懇談会において、書面にて配付いたしました。とりわけ十月十九日に配付させていただいたものは、審議経過が十分にわかるようにしております。外務省としてもできる限りの対応をさせていただきたいと思っておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。
○平岡委員 理解するわけにはいかないのでありますけれども、この点については引き続き要求を続けさせていただきたいというふうに思います。
 そこで、ことしの七月十二日に当委員会で、南野法務大臣に対して我々の同僚議員の方からもこの件について質問をさせていただきまして、南野大臣に、こうした公電関係、私もちょっと持っていますけれども、配付資料ではございませんから了承はとっていませんけれども、こういう形でしか開示がされていない。多分、これは前に見られたんですよね。
 こういうような状況になっているということでありまして、我々は、これでは交渉経緯が全くわからないじゃないかということで、南野法務大臣に対しては、御自身でこの公電をしっかりと見ていただきたいというふうに同僚議員がお願いしているはずでございますけれども、南野大臣、見られましたでしょうか。
○南野国務大臣 御指摘の公電につきましては、開示されていない部分、その墨で塗った部分についてもちゃんと見せていただきました。
○平岡委員 そこにはどういうことが書いてありましたか。
○南野国務大臣 公電を見たことということでございますが、公電の内容の詳細を今ここで私の口から申し上げることは適当ではないというふうに思っております。
 外務省におきまして作成いたしまして、先ほど御説明した概要と同じ内容のことが記載されております。政府が国際組織犯罪防止条約の交渉経過を隠しているとの御批判には当たらないというふうに思っております。
○平岡委員 我々は見ていないのでわかりませんけれども、外務省、先ほどの答弁の中でも、こういう記録を開示した場合には他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるんだということで、その記録部分を開示することはできないというふうに言いましたけれども、大臣、自分で読まれて、まさにそういうことが書いてあって、この部分は開示すべきではないというふうに思われましたか。どうですか。
○南野国務大臣 いろいろな中身がございますが、私の考えといたしましては、それはクローズドでお話し合いがされた部分につきましてでございますので、その中身はオープンにすることはできない約束のもとにあったということを理解した上で、その文言といいますか、公開したらいけないということについては、それはそういう約束事を守るということになってくるというふうに思います。
○平岡委員 今、約束があったからできないんだという話だったですけれども、外務省の答弁の中でいくと、こういうような性格の記録を開示した場合には他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるんだ、こういう話で、その書いてある中身がそういう信頼関係を損ねるおそれがあるのかどうかということを私は聞いているんですね。
 どうですか、見られて、本当に信頼関係が損なわれるおそれがあるような内容だったですか。どうですか。
○南野国務大臣 中身の文言一つ一つが信頼関係があるとかないとかということではなく、それについて、そういう約束事をもって、前提として話し合いをされた、これは国際的な問題でございます。
 先生も国際会議にお出になられて、起草委員会とかいうところにお出ましになっておられると思います。ある部分については、文言をどういうふうに解釈するかということだってあり得る話でございます、ある話でございますので、それはある意味で、英文で書かれるということであればネイティブの人の方がより確かだと思いますけれども、そこにもやはり我々は参加して、それなりの知識で対等に話をするということでございます。
 クローズドでやられたということ、会合は進行されたということについては、やはりその体制を守っていくべきだ、それが国際の信頼性を損なわない形で展開するものだと思っております。
○平岡委員 大臣の答弁は、そもそもそういう約束でやっているんだから開示できないんだという話ですけれども、私が聞いているのは、中身がそういう内容だったですかということを聞いているんですね。まあ、それはもういいです。
 そこで、私は、中身が秘密であれば、それは秘密でしようがないと。秘密であったとしても、では我々が一切見られないのかというと、いろいろな手段があると思うんですよね。国会法の中にも、秘密会を開いて、そしてそこで秘密にわたる事項についてもいろいろと調査をしたり審議をしたりすることができるという仕組みがあるわけであります。
この委員長、ぜひ、公電の開示を含めて、公電の中身を確認するために、この委員会において秘密会を開催することを要求したいと思います。委員長、いかがでしょうか。
○塩崎委員長 理事会ではなくて委員会を秘密会にという意味ですか。(平岡委員「そうです」と呼ぶ)理事会で諮りたいと思います。
※ おお、おもしろい提案だ↑関組長
○平岡委員 この点については引き続きまた要求してまいりたいと思いますので、理事会でしっかりとまた議論をさせていただきたいというふうに思います。
 そこで、このTOC条約の関係でありますけれども、この条約については、先進諸国における議会の承認あるいは批准の状況というのはどういう状況になっており、見通しとしてはどういう状況にあるかというのをまず教えていただけますでしょうか。
○小野寺大臣政務官 お答えします。
 国際組織犯罪防止条約につきましては、G8の諸国のうち、現時点ではカナダ、フランス、ロシアが既に締結済みです。その他のG8諸国につきましてはいまだ締結しておりませんが、アメリカとドイツについては、既に締結について議会において承認済みであると承知しております。
 また、英国については関係する法律の省令の改定作業を残すのみであり、イタリアについては必要な法整備についての検討を行っているなど、各国ともこの条約締結に向けて鋭意努力されているというふうに承知しております。
○平岡委員 今の答弁の中では、既に条約を締結したところ、あるいは締結に向けて審議中であるところ、いろいろあったように思いますけれども、これらの国々について言うと、今回のTOC条約の第五条、問題となっている条文でありますけれども、これに基づいていろいろな国内法制化を図るということが各国に義務づけられているわけでありますけれども、どのような国内法制化が行われているんでしょうか、外務副大臣。
○小野寺大臣政務官 この五条につきましては、組織的な犯罪集団への参加の犯罪化について規定したものです。
 今御指摘がありましたが、既に条約を締結しましたカナダにつきましては、共謀罪及び参加罪の規定を有しております。また、同条約の署名に先立ち、条約の趣旨に沿った形で国内法改正手続の大半を終えていたことから、締約に当たってはごく一部の法改正で足りたものと承知をしております。
 また、同時に、既に条約を締結しておりますフランスですが、これは参加罪の規定を有していたところ、さらに刑法を改正して条約を実施しましたが、その改正に当たっては特に問題がなかったと承知をしております。
 米国につきましては、共謀罪の規定を既に有していたところ、同条約第五条との関係では特に問題なく法整備が可能であったものと承知をしております。
 英国も、共謀罪の規定を既に有していたところ、同条約第五条との関係では特に問題なく法整備が可能であったと承知しております。
 ドイツは、参加罪の規定を既に有していたところ、同条約第五条との関係で特に問題なく法整備が可能であるものと承知しております。
○平岡委員 今の答弁でもおわかりのように、ほかの先進諸国というのは、この条約締結に当たって余り大きな法律改正というのをしないでも済んでいるんですよね。
 私が何を言いたいかというと、日本の外交当局というのは、この条約を結ぶに当たって一体何をしていたんだ。本当に、これほどまでに日本の法体系を無視するような、離れてしまっているような法律改正をしなければ条約が締結できない、こんな交渉、なぜしてきたんですか。これは外務副大臣に聞きたいと思います。
 逆に言えば、こういうものをわざわざ条約として署名してきたということは、私は、日本の法務当局が、この機会にいろいろなことをこの日本社会の中に持ち込んでくる、いろいろな、この社会を管理していくような、そういう法体系を持ち込みたいがためにこの条約にあえて異を唱えないで帰ってきたんじゃないか、こんな疑惑まで私は持っています。
 まず、最初の質問については外務副大臣、そして二番目の質問については法務大臣、お答えください。
○小野寺大臣政務官 政務官答弁で恐縮です。
 今のお話で、我が国外務省を初め努力が足りなかったのではないかというふうなお話がありました。
 確かに、現行の法制度には一般的な共謀罪等の規定はありません。我が国の法制度に合うように、本条約の審議過程におきまして、日本としましても積極的な主張、提案を行うことにより、それらの一定程度を条文に反映させることができたと外務省としては考えています。
 すなわち、当初の共謀罪の規定は、重大な犯罪を行うことを合意するというものであり、また参加罪については、組織的な犯罪集団の犯罪活動またはその他の活動に参加する行為というものでした。その時点では、まだ共謀罪の対象となる重大な犯罪の範囲が定まっておりませんでした。また、共謀罪について、現在のように「組織的な犯罪集団の関与するもの」という要件を付すことも認められておりませんでした。
 そこで、我が国は、このままでは我が国の法制度と相入れない旨の意見を強く述べまして、共謀罪については、「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を加えるべきことなどを提案し、関係国との調整の結果、「国内法上求められるときは、」「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を付すことができる旨の規定とすることが各国に受け入れられ、現在の本条約第五条の規定となりました。
 このように、我が国としても積極的な交渉を行った結果、我が国の主張が受け入れられ、本条約第五条の規定となったものであるというふうに考えております。
○南野国務大臣 国際組織犯罪の防止条約、これは重大な犯罪の共謀などを犯罪とすることを義務づけておりますけれども、その理由は、組織的な犯罪というものは、たくさんの者が計画や準備に関与し、綿密に計画を立て、組織の指揮命令等に基づいて行われるという性質があろうかというふうに思っております。
 したがいまして、このような共謀がなされると、計画どおりに犯罪が実行される可能性が高いということであり、また一たび犯罪が起きてしまうと、重大な結果、または莫大な不正が生じることになってくると思います。
 そこで、このような組織犯罪に効果的に対処するためには、犯罪の実行に着手する前の段階でその一定の行為を処罰の対象とすることが不可欠であるというのが条約の要請、すなわち国際社会の共通の認識であるというふうに理解いたしております。
 そこで、我が国も、この条約を締結し、国際社会と協力して一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するため、この条約が義務づけるところに従いまして、国際的な共犯、犯罪の共謀罪を新設することとしたものでございます。決して、先生が先ほどお話しになられましたような、監視社会をつくろうというものではございませんということを御理解いただきたいと思います。
○平岡委員 今の南野大臣の答弁は、非常に好意的に解釈して、これはあくまでも国際的な組織犯罪を防止するための条約であって、我が国の国内のいろいろな社会を監視するため、管理していくためのものではない、こういうものだという前提で、これから議論を進めさせていただきたいというふうに思います。
 そこで、この条約について言えば、私がいろいろな人たちから調べていただいたことによりますと、条約に基づく国内法制化の中で、ウクライナが、この条約の中で重大犯罪というものが四年以上の自由刑またはそれ以上の自由刑というようなことになっているけれども、この点について留保あるいは解釈宣言をして、ウクライナについては懲役五年以上のものについて重大な犯罪とするというような国内法制化といいますか、国内法との関係を整理されたというふうに聞いておりますけれども、この点は事実でしょうか。
○小野寺大臣政務官 委員御指摘のとおり、ウクライナにつきましては御指摘のような状況になっていると思います。
 ウクライナは、条約締結に当たって、留保及び宣言の名のもとに、重大な犯罪という用語は、ウクライナ刑法に言う重大な犯罪及び特に重大な犯罪に相当するものである。ウクライナ刑法に言う重大な犯罪とは、法により五年以上で十年を超えない自由刑が定められた罪をいい、ウクライナ刑法に言う特に重大な犯罪は、法により十年以上または無期の自由刑が定められた罪をいう旨表明しています。したがいまして、ウクライナは、留保及び宣言の名のもとに、本条約に言う重大な犯罪を長期五年以上の自由刑としたことは事実です。
 ただし、ウクライナの留保及び宣言の趣旨につきましては、同国における四年以上五年未満の自由刑が定められている犯罪が存在するかどうかなど、ウクライナの法体系を踏まえて検討する必要があり、現在、私どもはウクライナ政府に照会しております。まだ回答についてはいただいておりません。
 したがいまして、ウクライナの本件留保及び宣言の趣旨及びその条約上の評価につき、現段階で、長期四年以上の自由刑を長期五年以上の自由刑に限定したものと言えるかどうかを含め、確定的なお答えをすることは今困難だと思っています。
○平岡委員 一応、確認しなければいけないことが幾つかあるということですから確認をしていただきたい、その結果についてはしっかりとこの委員会にも報告していただきたいという前提でお話しさせていただきますと、条約というのは、条約法に関するウィーン条約というのがあって、その第十九条の中に条約の留保というものが認められているというふうになっているわけでありますけれども、このTOC条約についても、条約法に関するウィーン条約第十九条に基づく留保を付することは可能であるというふうに考えていいでしょうね、外務副大臣。
○小野寺大臣政務官 外交官経験もありますし、また法の専門家であります平岡委員の御指摘のとおり、ウィーン条約におきましては留保するということが可能になっています。多国間条約について、ある国が条約の一部の規定に関して問題を有する場合には、当該規定に拘束されずに条約に参加し得るように、留保を付して締結することが一般的に認められております。
 TOC条約では、第三十五条3、国際司法裁判所への紛争付託の拒絶を除き、留保に関する特段の規定は存在しておりませんが、交渉過程において、本条約への留保については、ウィーン条約法条約の留保に関する規定が適用されることが確認されています。したがって、ウィーン条約法条約第十九条に従い、条約の趣旨及び目的を損なわない限度であれば、本条約に対し留保を付すことは、御指摘のとおり、可能であります。
 しかし、本条約については、既に平成十五年の通常国会におきまして、留保を付さずに締結することにつき国会の承認をいただいております。行政府としては、本条約につき、このような形で国会の承認をいただいている以上、当然、留保を付さずに締結することとしており、その前提での国内担保法の審議をお願いしているところであります。
○平岡委員 今、国会で留保をつけないで締結することを承認していただいているという話でしたけれども、この留保というのは一体だれがつけるんですか。
○長嶺政府参考人 お答えいたします。
 条約に対する留保につきましては、これは、国として締結する際に留保を付する付さないということがあるわけでございますけれども、国内においては、これは条約の締結権を有している行政府が留保を付するということになります。
 ただ、これは先ほど答弁もございましたように、このTOC条約につきましては、留保は付さないということで国会における御承認をいただいたものでございますので、それに基づきまして、今後締結をする際に、今の経緯を踏まえまして締結をする、すなわち、留保を付さないで締結するということになろうかと思います。
○平岡委員 今、私たちは何をしているのか。私たちは、このTOC条約を締結するに当たって必要な国内法制化をしている。この国内法制化ができなければ締結ができない、こういう中で今議論しているわけですよね。
 そういう状況の中で、この国内法制化が、我が国の法制の中で、必ずしも法体系の中でうまくそぐわない、そういう状況の中で国内法化はこれが限度だというものがあったときには、これは国会の承認としての条約の締結についての承認がかつてあったといえども、国内法制化はここまでしかできないんだという意味においての留保というのは当然あり得るんじゃないですか。どうですか。
○長嶺政府参考人 お答えいたします。
 若干、留保の関係する国内的な手続との関係もございますので、その面もあわせて御答弁申し上げます。
 留保につきまして、これは厳密に言いますと、条約の規定に基づいて行う留保と、それから今委員が御指摘になっておりますようなTOC条約の一般的な留保の可能性ということは、ちょっと分けて論ずる必要がございます。
 後者のような、条約の規定に基づかないで留保を付して条約を締結するかどうかという際には、これは、条約の特定の条項に係る適用関係が、その留保を付すことによって変更され、または排除されるという効果がございますので、行政府といたしましては、条約の締結について国会の御承認を求める際に、付す場合につきましては、留保を付して当該条約を締結することについて国会の御承認をいただく、こういう手続になるわけでございます。
 今回御議論になっていますTOC条約につきましては、一昨年の通常国会におきまして留保を付さないで承認を求め、国会の方としてそのとおり御承認をいただいたわけですので、この条約につきましては留保を付さないで締約するということで、いずれ締約する際にはそのような態度をとるということになると考えております。
○平岡委員 今の答弁でもある程度明確になっているわけですけれども、国会が留保をつけないで承認することを承諾したということでありますから、では国会が、こういう国会の国内法制化の審議の過程の中で、やはりこれは留保を付してでも、この条約の適用については必ずしもそのとおりの国内法制化じゃないというものをつくったとしたら、これはやはり国会の意思として、留保して承諾をすべきであるということを改めて承諾する、このことも可能だというふうに私は思います。
 そういう意味で、あくまでも行政府が、自分たちは付したくないんだ、あくまでも国会が承認してくれたんだからその承認のとおりにやりたいんだというのなら、国会の承認をもう一度とり直すということを我々としてやればいいというふうに私は思っております。
 そこで、この留保をつけられるということについての条件がこの条約法に関するウィーン条約であるわけでありますけれども、どういう場合には留保を付すことができるというふうになっていますか。
○長嶺政府参考人 お答え申し上げます。
 これはウィーン条約法条約の第十九条の、先ほど御指摘のあった条項でございますが、中身を御紹介するということで御答弁させていただきたいと思います。
 第十九条は、条約には留保を付することができると書いてございますが、その例外として三点述べております。第一に、条約が当該留保を付することを禁止している場合。第二に、その条約が当該留保を含まない特定の留保のみを付することができる旨を特に定めている場合。第三に、今の二つの場合いずれにも該当しない場合でありますけれども、当該留保が条約の趣旨、目的と両立しないものである場合。
 以上が留保ができない場合でございますので、これを反対から読めば、最初の、禁止しているあるいは留保を認めないというのに該当しない場合には、条約の趣旨、目的と両立する限りにおいて留保というのが許容される、こういうふうに解するところでございます。
○平岡委員 今、条約の規定を紹介していただきましたけれども、先ほど紹介したものの中では、第一番目も第二番目も、こんなことはこのTOC条約の中には定められていませんからこれは該当しないということで、三番目の、当該留保が条約の趣旨及び目的と両立しないものであるときはだめだけれども、それ以外はいいんだということに該当するんだと思いますけれども、このTOC条約の趣旨、目的というのは一体何ですか、外務副大臣。
○小野寺大臣政務官 それぞれの条項によって違っております。
○平岡委員 意味不明の答弁ですけれども、条項によって違うというのなら、一つ一つの条項が、そこで違っていたらもう全然留保はつくれないというのは、そうしたら、みんな留保はつくれないという話じゃないですか。
 条約の趣旨、目的というものは、そもそもこの条約がどういう目的でつくられているのか、どういう趣旨に基づいてつくられているのかということですよね。
○小野寺大臣政務官 そのような御質問ですので、お答えいたします。
 この条約の全体的な趣旨ということによりますと、法の網をかいくぐって暗躍する国際的な犯罪組織に効果的に対処するため、各国の法制度を整備し、法執行活動を強化するとともに、国際的な組織犯罪の捜査や訴追における国際協力の促進を目的として作成されているということで理解しております。
○平岡委員 どこから引用されたのか、ちょっとわかりませんけれども、今いみじくも言われたように、この条約の第一条に目的が書いてあり、そして第三条に適用範囲が書いてあるわけでありますけれども、この目的でいきますと、「国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進すること」だと。そして、この条約の適用について言えば、「性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、捜査及び訴追について適用」していくんだ、こう書いてあるわけですね。
 ですから、これが趣旨、目的であるので、この趣旨、目的と両立しないような留保ならできないけれども、その趣旨、目的と両立するようなものであるならば、これは留保は可能である、こういう位置づけになっているわけです。
 そういう意味で、私は、これから一つ一つといいますか細かい各論に入っていくに当たって、こういう状況にあることを踏まえて、もっともっと国内法制化に当たっては国内法の基本原則に沿った立案をしていただきたい、今回の法案はそれに全然合致していないわけでありますからもう一度出し直してきてほしい、こういう趣旨で以下質問させていただきたいというふうに思います。
 そこで、まず最初に、この法案の立法事実があるかどうかということでありますけれども、これは七月の十二日の同僚議員の質問の中でもありました。そこで、法制審議会では、法務省は共謀罪について国内的には立法事実はない旨の説明をしているというふうに指摘がされているのでありますけれども、そういう事実、法務省がそういうことを説明したという事実はあるんでしょうか、どうでしょうか。
○南野国務大臣 御指摘の法制審議会での発言といいますのは、事務当局から、国内的なニーズにこたえるという形はとっておらず、条約締結のために必要な犯罪化等を図っていきたいということを基本に考えているとの発言がなされたことを指しているものと思われます。この発言は、共謀罪の新設が直接的には国際組織犯罪防止条約を締結するために必要であることに基づくものであるという趣旨でございます。
 しかし、これに加えまして、法制審議会におきましては、我が国における国際的な組織犯罪の現状が深刻な状況を迎えてきていることについても説明がなされました。
 また、特に条約五条が犯罪とすることを義務づける共謀罪につきまして、我が国においても犯罪組織が資金を得るために種々の犯罪に関与することが行われているので、実際にそれが着手する前の段階であっても、端緒を得て犯罪組織の活動を摘発していくことは、組織的犯罪に対抗するための有効な武器になると考えている旨の発言もなされているところでございます。
 また、国内的にも、法案の共謀罪を新設することによりまして、例えば暴力団による組織的な殺傷事犯やいわゆる振り込め詐欺のような組織的な詐欺事犯などについて、その実行に着手する前の段階での検挙、処罰が可能となり、被害者の発生を未然に防止できるなど、我が国における組織的な犯罪により一層効果的に対処できることとなりますので、国民の安全と安心を確保する上でも十分に意義があると考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○平岡委員 今読み上げられた中身は、条約締結のために必要な犯罪化を図っていくということであるんだということであって、国内に本当に、今回皆さんが提案しているような法律をつくらなければいけない、そういう事実関係があるのかという点については何ら答えていない。
 特に問題なのは、国際的な犯罪ではなくて、国際的ではない犯罪についてまでこの共謀罪というものを今回の法案で持ち込んでいること。このことは何ら国内的には立証されていない、この必要性があることについては何ら立証されていないというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。――ちょっと答弁を探すのに時間がかかるのかもしれません。私はないと思っているということであります。
 そういうことで、先ほど私は条約の留保の話をしましたけれども、この条約の趣旨、目的というのは、先ほどから申し上げているように、国際的な組織犯罪の防止、これについていろいろと協力したりするんだというようなことがあるわけですね。国内的な問題については、これは条約の趣旨、目的とは違うんですね。
 そういう意味では、我が国では、国内的には、国内的な問題だけに関するものについては、こういう共謀罪をつくらなければいけない、そういう事実はないんだ、これが私は主張できると思うんですけれども、どうでしょうか、法務大臣。
○南野国務大臣 我が国内で、国内的にと言われるその限定される文言については、我々日本人がということになるんでしょうか。先生のイメージにある部分を教えていただきたいと思います。
○平岡委員 先ほどから言っているように、この条約の趣旨、目的というのは国際的な組織犯罪の防止ということですね。ですから、国際的でない組織犯罪について、今回のような共謀罪を持ち込んでこなければいけない、そういう立法事実というのは我が国にあるんですかということです。
○南野国務大臣 お答え申し上げますが、条約第三十四条第二項は、国内法で共謀罪等を犯罪とするに当たり、国際性の要件を付することを認めておりませんが、その理由は次のようなものと考えられます。
 すなわち、現実の社会では、ある犯罪について、その背後に国際的な犯罪組織が存在する場合であっても、個別具体的な犯罪行為だけを見ると、単独犯であったり犯罪行為自体は一国内にとどまるため、犯罪の国際性を認めるのが難しいというような場合もあります。また、特に捜査の初期の段階におきましては、捜査の対象となっている犯罪行為が国際的な性質を有するかどうかが明らかでなく、さらに捜査を進めてもその立証が容易でない場合が少なくありません。
 このような現実を踏まえますと、仮に、国内法で共謀行為を犯罪とするに当たりましては、国際性を要件とすると、検挙、処罰できる範囲が不当に狭くなってくる、そういうふうに狭くなる上、組織犯罪の早期かつ的確な検挙、処罰が困難となってくる。ひいては、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するという条約の趣旨、目的を没却してしまうことになりかねないというふうに言われております。
 そこで、条約は、国際的な組織犯罪に対する効果的な対処を確保するため、三十四条二項におきまして、国内法で共謀罪等を犯罪とするに当たり、国際性の要件をつけることを禁止したものというふうに考えられております。
○平岡委員 大臣は条約を引用されてしゃべっていますけれども、私は、この条約というのは、先ほども言いましたように、条約の趣旨、目的に反しない限りは我が国は留保ができる、その前提で話しているんですよ。
 だから、この条約の趣旨、目的は、先ほど言った国際的な組織犯罪の防止についての話ですよ。今、この条約に基づいて国内的なものまで共謀罪を持ち込まなければ、処罰できるものあるいは捜査できるものが何か不当に狭くなるというふうに言われましたけれども、それは取り締まり当局側のエゴであって、独善的な考え方であって、それは逆なんですよ。むしろ、国際的な組織犯罪を防止する観点からいったら、純国内的なものについてはできる限り除外していくというような法制度をつくっていかなければいけない。このことが我々の国内法制により近づけていく道だということなんですよ。
 だから、大臣が言っておられるのは、不当に狭くなるというのは、あくまでも取り締まる側の論理であって、これは社会全体に暮らしている人たちの論理じゃないんですよ。大臣、どうでしょう。
 大臣、私が言っているのは、条約からちょっと、余り条文にこだわらないで、条約の趣旨、目的というのが、国際組織犯罪防止のための条約ですと。ですから、そういうものが防げるようなものであるならば、条約の趣旨、目的に反していない。だから、その部分について、過度に国内的にいろいろな悪い影響を与えるものであれば、国内法の問題として我々はそこまではできませんということを考えるのが我々の役割じゃないか、我々はそういう立場に立つべきじゃないか。
 今大臣が説明されたのは、むしろ不当に捜査の範囲が狭くなるとかといったような、それは取り締まる側の論理でしかない。このことについて大臣の率直な御意見を伺いたいということなんです。
○南野国務大臣 いろいろな事案が出てくるというふうに思いますけれども、もしその事案が発生した場合には、その中身をしっかりと見てみないと、国内の問題だからそれは国際的につながっていないねということも言えないというふうに思いますが、そういう意味では、国内の問題は別よとなると、これはまた国際的に協力することはできにくいということになると思います。
○平岡委員 今、協力ができなくなると言いました。どういう協力ができなくなるんですか。
○南野国務大臣一番大切なのは、我が国における、安心、安全に暮らすためにはどのような形で生きていったらいいか。我が国だけじゃなく、国際的にどのように国民の安寧を保つかということにもその問題点は関連しているというふうに思うからであります。
○平岡委員 いや、国際的に協力ができなくなると言われたので、どういう協力ができなくなるんですか、どういう場合が困るんですか、それをまず言ってください。
○南野国務大臣 いろいろな捜査範囲がございます。我が国でも、この問題についてはこのように捜査していこうというふうに計画した場合、それが国内にとどまらず国際的な犯罪ということになった場合には、国際的な相手国、それはどこかわかりませんけれども、そういうユニバーサルな問題点についても協力を得なければ、我々は、いい結果ができてこない。そういう意味では、国といろいろな、多国的にしていかなければならない話であろうと思います。
○平岡委員 大臣、よく考えてください。外国から我が国に捜査協力を求めてくる、これはもう国際的だからこそ協力を求めてくるわけですね。今大臣が例に挙げられました、我が国が外国に捜査協力を求めていく、これは国際的だから求めていくのですよ。つまり、国際的な捜査協力というのは必ず国際性というものが認識された上で協力を求めていくのであって、先ほど言いました、純国内的な共謀罪をつくらなくたって十分に国際的な協力はできるんですよ。大臣、そうじゃないですか。
○大林政府参考人 恐縮でございます。
 委員がおっしゃっている、留保できるかどうか、あるいは条約の解釈の問題については、外務省の問題だと思います。
 今お尋ねになっている問題について一つだけ例を出させていただきますと、共謀罪、今回、重大な犯罪ということで提案させていただいているところでございますけれども、もう委員十分御承知のとおり、現在、日本には共謀罪というのはそれほど多くはありません。
 ただ、先ほどから御紹介になっているように、外国では共謀罪がもう通例であるところもあります。ですから、今回、共謀罪を一応条約がつくれということになっていますと、日本の場合には共謀罪が限られた範囲しかないということによって、犯人引き渡しとか司法共助とか、そういう問題においてそごを来して、応じられない部分が多いということは一般的に言えると思います。
○平岡委員 刑事局長、何か捜査共助に応じられないと言われますけれども、それは国際性があるから捜査共助というのが行われるのであって、その捜査共助の要請があるんでしょう、国際的だから、国と国との間をまたがっているから。だから、そういうものについて協力さえできれば、別に何の問題もないじゃないですか。純粋に国内的なものを取り締まるような法律をつくる必要はどこにもない。
 今の刑事局長の答弁はおかしいですよ。それはもういいです、おかしい答弁はそのままで残しておきたいので。私は、強くそこはおかしいということを指摘させていただきたいというふうに思います。
 そこで、この条約の中では、三十四条第一項に「自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる。」というふうに規定してあります。そして、今まで法務大臣が条約を一生懸命引用されてきた部分というのは、実はこの三十四条の二項にあるわけですね。
 そうすると、三十四条の一項というのは大原則を定めるものであって、この原則というのは非常に大きな原則だと私は思うんですね。そういう意味においては、この「自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる。」という三十四条第一項の規定をしっかりと国内法化に当たっては維持していかなければいけない、私はこのように考えるんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○南野国務大臣 先生がお話しになられておられる国際組織犯罪防止条約第三十四条一項に言う「自国の国内法の基本原則」というのは、各国の憲法上の原則など国内法制において容易に変更することのできない根本的な法的原則を指すものと解されております。
 この点、我が国の刑事法におきましては、現実に法益の侵害が発生した場合はもとより、その危険性のある行為を未遂犯や危険犯として処罰することとしているほか、特に重大な罪や取り締まり上必要がある犯罪については、予備罪、共謀罪等、実行の着手前の行為をも処罰することとしております。
 また、法案の共謀罪は、犯罪の共謀を広く一般的に処罰するものではなく、重大な犯罪であり、かつ、組織的な犯罪集団が関与する犯罪の共謀に限って処罰の対象とするものである。したがって、今回の組織的な犯罪の共謀罪の新設ということにつきましても、我が国の国内法の基本原則に反することにはならないものであるというふうに思います。
○平岡委員 大臣、いみじくも、我が国の国内法の基本原則の中には法益侵害の結果が発生したものについて処罰していくんだというようなことがあるけれども、これは大した原則じゃないんだ、そんな趣旨のことを言われましたけれども、私はこれは……(発言する者あり)いやいや、それは憲法の原則になっていないとか、何かいろいろ言われたじゃないですか。だから今回のはいいんだとかと言っておられるので。
 それはやはり、書いてあるか書いていないかというのは別として、今まで我々の刑法の長い歴史があるわけですよ。そういう原則を踏まえていたら、やはりこの共謀罪というのは、これは漆原委員もかつて、共謀罪をつくるのが今度は原則になるんですかどうですかという質問に対して、どっちを言っているかわからないような答弁だと言って何か非難されておられましたけれども、やはりこんなことで共謀罪というものを原則にするというのはおかしい。
 あくまでも、我が国の共謀罪あるいは陰謀罪というものは、非常に重大な、本当に重大な、国が転覆するかもしれないといったような、そういうような重大な罪に対して設けているというのが原則であって、六百十九にも上る罪に対して共謀罪というものを設けることは、決して我が国の基本法制にはなじんでいないんですよ。
 まず、このことを原則として物事を進めていかなければ、これがいいんだと言われたら、もうこれ以上議論をしたってしようがないですよ。こんな条約を締結した外務省の責任、こんな条約を承認した国会の責任が問われなきゃいけない、こんなことにもなってくるというふうに思います。
 そうならないためにも、我々は、この国内法制化に当たって、しっかりと国内法の基本原則というものを守る、そういう国内法制化を図っていかなければいけない、このことをまず前提にしてお話をさせていただきたいというふうに思います。
 そこで、先ほど組織的犯罪集団の関与というものを前提としているんだということで限定がされているんだというような話がありましたけれども、果たしてこれは限定されているんですか。これまでの議論の中ではかなりこの点についても、私じゃなくて与党の紳士的な議員からも随分指摘があって、刑事局長も、ちょっとやはりやばかったかな、そんな答弁も出ているようでありますけれども。
 ここのところは、組織的犯罪集団というものが我が国の法律の中では必ずしも限定されたものになっていない、かなり幅広いものになっている。この点をもう一度、大臣の言葉として、どのようにお考えになっているのか、現時点でどういうふうに思っておられるか、このことをしっかりと答弁していただきたいというふうに思います。
○南野国務大臣 団体の定義を定めた規定に該当することだけで直ちに共謀罪の対象になったり処罰されたりということは全くありません。あくまで厳格な組織性の要件をすべて満たした場合に初めて、このような共謀を行った個人が罰則の対象となるということでございまして、法案で新設する組織的な犯罪の共謀罪、これは厳格な組織性の要件を満たす重大な犯罪、つまり、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行う犯罪、または団体の不正権益の獲得、維持、拡大の目的で行う犯罪を共謀した場合に限って成立することとしております。このような成立要件につきましては、法文上も明記されております。
 したがいまして、先生の御指摘の団体等の点につきましては、前者の要件を満たすのは、犯罪行為を行うことを共同の目的を有する団体として意思決定する、すなわち、犯罪行為を行うことが共同の目的に沿うような団体であり、かつ、団体内部に犯罪実行部隊を持つような団体である場合に限られることでありますし、後者の要件を満たすのは、例えばみかじめ料を獲得するための縄張りのような、その威力に基づく支配力を有するような団体、具体的には暴力団のような団体に限られるということでございます。
○平岡委員 具体的にはこういうものに限られるとかと言われても、どこを見たらそんなことが書いてあるのか、さっぱりわからないんですよね。これはもう皆さん指摘されているところですから、そういう指摘を踏まえて大臣の認識を聞いたんですけれども、大臣はそういう認識をほとんどお持ちにならないで、これまでどおりの答弁をされておられますから、これは国会で幾ら議論しても仕方ないのかもしれません。そうじゃなくて、国会での議論というのは、よりよいものを求めていく、そういう精神でぜひ参加していただきたいというふうに思います。
 この条約の中には、団体というものについていろいろな制約が課されているというふうに思うんです。条件というか要件というものが課されているというふうに思うわけでありますけれども、例えば、条約の中では、「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するもの」といったような限定が付されているわけですよね。
 しかし、今回提出された法案の中には、そうした限定は何もない。これまでの議論でいけば、七月十二日に行われた議論をとってみても、宗教的目的や政治的目的の集団についても含まれてくる可能性がある、そういう条文になっている。
 そういうふうに幅広くなっていることに対して、大臣はどのようにお考えですか。この団体の範囲というものをしっかりと明確に、少なくとも条約に沿った中身に限定していく、そういう法律にすべきじゃないかというふうに思いますけれども、どうでしょうか。
○南野国務大臣 国際的組織犯罪防止条約に言う「金銭的利益その他の物質的利益」といいますのは、例えばわいせつ物をやりとりするような、主たる動機が性的欲望を満たすことにある犯罪も含まれるなど、極めて広い意味を有すると解されております。また、このような利益を得ることに間接に関連する目的でも足りるとされていることから、その適用範囲はさらに広く、純粋に精神的な利益のみを得る目的で行われる犯罪が除かれるにとどまるものと考えられます。
 しかし、仮にそのような目的で行われる犯罪であっても、それが重大な犯罪である以上、少なくとも我が国におきましては、他の目的で行われる犯罪と区別してこれを処罰しないこととするのは適当ではないと考えられます。そして、厳格な組織性の要件を満たす場合には、犯罪実現の危険性が高く、その事前抑止の必要性も高いので、他の目的で行う犯罪を共謀した場合と同様に処罰すべきであると考えられております。
○平岡委員 今大臣が読み上げられた中身をずっと聞いていましたけれども、大臣、私が冒頭に、この条約の交渉をするに当たって法務省は何を考えたんですかと最初に前提として聞きましたよね。この条約をきっかけとして日本の国を管理社会にしていく、そういうことを目指して法務省は今回の法案をつくっているんですかと。そうじゃないというふうに言われました。
 今大臣が読み上げられたことは、まさに、この条約を批准するということを理由にして、この日本という社会を管理国家にしていく、監視国家にしていく、そういうことを目指したものじゃないですか。不当に狭くなるからというのは、それはあなた方の論理ですよ。市民社会の人たちの論理じゃないですよ。そこのところをやはりしっかりと認識していただかなければいけない。勝手にこの条約の適用範囲を超えるような形で我々の社会を監視社会にしないでいただきたい、このことを私は強く申し上げたいというふうに思います。
 大臣、何か言いたいことがあるなら。
○南野国務大臣 先生からただいま、監視社会をつくることになるのではないかというお尋ねがございました。
 法案の共謀罪につきましては、すべての重大な犯罪の共謀を処罰の対象とするものではなく、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われる等の厳格な組織性の要件を満たす重大な犯罪の共謀に限って成立することといたしております。何でもかんでもということではないわけでございます。
 団体の範囲が無限定であるとの御指摘も含まれておるわけでございますが、これは、団体の定義を定めました組織的犯罪処罰法第二条の第一項の規定に該当することだけで直ちに共謀罪の対象になったり処罰されたりするということでは全くありません。あくまでも、先ほど述べましたような、厳格な組織性の要件を含め、共謀罪の構成要件をすべて満たした場合に初めて、そのような共謀を行った個人が処罰の対象となるわけであります。
 したがいまして、共謀罪を創設することが、何らかの団体に属する人を広く監視するようなことになるものではないかと思っておられますが、そうではありませんということを申し上げたいと思います。
○平岡委員 この団体に該当することが直ちに処罰の対象にならない、そんなことは私もわかっていますよ。いろいろな要件が重なってきて処罰の対象になる。
 しかし、そのときの要件の一つに、この団体性が、どんな団体なのかということがあるわけですよ。そのときに、この団体というのは、条約の中ではこういう団体だというふうに限定されたものに書いてあるわけですよ。さらにそれを超えて今回の法案は出てきているわけですよ。だから、その点をつかまえて私は問題にしているわけであります。
 大臣、そう思いませんか。条約で規定されている組織的犯罪集団を超える概念としてこの団体が出てきているんじゃないんですか。超えていないんですか、全く同じですか、どうですか。
○大林政府参考人 基本的には、この立法過程は、当然のことながら、この条約を踏まえて国内法をつくったものでございまして、それに適するものとして、従来どおり組織的犯罪処罰法というものがある、その要件に条約のものが重なるということでこれを立法した経緯もございます。
 ただ、子細な面で見た場合に、先ほど大臣がお答えになったように、宗教上のもののみを目的とする場合にどうだ、条約上はそれは除かれるであろうと。しかしながら、国内法につきましては、やはり日本国内におけるまたそれなりの治安情勢なりそれなりの立法の必要性があるということで、委員がおっしゃっているように、今回の共謀罪の部分が条約より広い部分も確かにあると思います。
 ただ、団体の問題からしますと、先ほど大臣おっしゃったように、いわゆる暴力団的な団体ということで、解釈としてそういうふうに非常に狭めた形でやって、これまでも御説明しているとおりでございまして、多少差はありますけれども、基本的には条約を踏まえてつくられたものであるということを御理解いただきたいと思います。
○平岡委員 条約を踏まえたものであるということはわかりますけれども、条約を踏まえてさらにまた一歩も二歩も踏み込んでいるということを私は言っているのですから、今回の条約の締結に当たって必要な国内法制化を図るんだというのであれば、この共謀罪というのがもともと我が国の法体系の中では極めて例外的なものである、この前提を踏まえてやはり法制化していただかなければいけない。
 この機会に、何が何でもいっぱい対象となる団体を、この条約を超えて、また今までのものを維持するあるいはふやしていくんだ、そういう発想に立ってこの法制化をしてほしくないという意味において、できるだけ、条約で限定されている団体、場合によってはまたさらに限定してもいいのかもしれませんけれども、少なくとも、条約で限定されている団体を超えるような団体が含まれるような国内法制化はしてほしくないということを私としては申し上げたいというふうに思います。
 そういう意味でも、この法案については、まず出し直していただきたいというふうに思います。
 次に、この条約の中でも書かれている話でありますけれども、国内法制化に当たっていろいろな要件を付することができるということにはなっているわけでありますけれども、そのときに、この条約の第五条の1の(a)のところに、こういう犯罪をつくりなさいというものの中に、犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪としなさい、こういうふうに書かれています。
 この別個の犯罪ということに関してでありますけれども、我が国は、予備罪とか準備罪というのは、この条約に言いますところの犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪ではないというふうに理解していいですか。
○南野国務大臣 国際組織犯罪防止条約五条の1の(a)となっていますが、それは、犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪として、いわゆる共謀罪または参加罪を犯罪とすることを義務づけるものでありますが、この規定を離れて一般的に申し上げるならば、我が国の刑事法における予備罪または準備罪は、実行に着手する前の一定の行為を処罰するものでありますので、犯罪の未遂または既遂とは別個の犯罪ということになります。
○平岡委員 予備罪、準備罪が別個の犯罪という前提で考えると、今度は予備とか準備というのは、またTOC条約第五条の中で「国内法上求められるときは、」という規定の中で「その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為」、一般的には、アメリカ法で言うところのオーバートアクトとかいうふうに言われているようでありますけれども、我が国の言葉に当てはめたときには、今言ったような条約上にある行為の中には予備とか準備というのは入るのでしょうか。
○小野寺大臣政務官 ただいまの御質問ですが、本条約にあります「合意の内容を推進するための行為」とは、米国法におけるオーバートアクトを念頭に置いたものであり、我が国で言う予備行為等を念頭に置いたものではありません。
 オーバートアクトは、予備行為とは実行の着手前の行為という点では共通していますが、共謀罪の成立の要件としてのオーバートアクトのかわりに予備行為を要求することが条約の趣旨に反するか否かについては、予備行為の概念をいかに解するかによるものと考えております。
○平岡委員 私、予備と準備を言ったんですけれども、似たようなことをしゃべられるんだと思いますけれども、念頭に置いていないというのは、これはだれのあれですか。念頭に置いていないというのは、別にだれが念頭に置いているか置いていないかにかかわらず、この条約の条文の規定を見て、予備とか準備というものがこれに該当するのか該当しないのか。該当しないんですか。どうですか。
○小野寺大臣政務官 条約第五条1の趣旨は、組織的な犯罪集団による重大な犯罪を実効的に防止するという趣旨から、当該犯罪行為を行うことを合意すること自体を独立の犯罪として処罰することにあります。
 仮に、予備行為について、実行行為着手前の行為が予備罪として処罰されるためには、当該構成要件の実現のための客観的な危険性という観点から見て実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要件とするものと考えるのであれば、合意そのものをもって犯罪化するという本条約の趣旨に合致しないことになるおそれがあると考えられ、この点を慎重に吟味する必要があると考えます。
○平岡委員 慎重に吟味していただきたいと思いますけれども、私の常識的な日本語の考え方からいけば、ここに書いてある「その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為」というものの中には、予備行為とか準備行為も当然入ります。それ以上に、予備行為とか準備行為以外のものもあるのかもしれない。それは確かに認めますけれども、予備行為、準備行為というのは、当然これは入るんですよ。むしろ予備行為、準備行為の場合は、その合意の参加者一人ではなくて、その合意をした参加者以外の人が行うものも入ってくるという意味では、逆に広いものもある、私はそう思うんですね。
 そういう意味では、我々は、この条約の条文を国内法に当てはめて考えるときには、日本で既に、国内法の体系の中ではそんなにたくさんはないかもしれませんけれども、予備罪、準備罪というものが国内法では共謀罪よりもより幅広い範囲で存在しているというような視点に立って、例えば国内法制化をするときには、準備罪または予備罪とそれらの共謀共同正犯または教唆犯というような、我が国の法体系になじむ仕組みで国内法制化を図ることも可能ではないかというふうに私は思うんですけれども、法務大臣、どうでしょう。
○南野国務大臣 今先生が申されましたことでございますが、「合意の内容を推進するための行為」というのは、これは米国法におきます、先生もお話しになっておられるいわゆるオーバートアクト、これを念頭に設けられたものであると承知いたしております。そのような起草経過も踏まえまして解釈されるべきであると考えます。
 そして、米国の判例におきましては、我が国における予備罪の予備行為には当たらないと考えられるような行為、例えば殺人の共謀をした者が殺人の実行を依頼した者に対して報酬の一部を支払う行為や、薬物の密売を共謀した者が他の共謀者との間で密売について電話等で話し合って段取りをする行為、これもオーバートアクトに当たるとされているものと承知しております。
 また、条約におきましては、犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪として、いわゆる参加罪または重大な犯罪を行うことを一または二以上の者と合意することを犯罪とすることを義務づけておりまして、このような義務を履行する方法としましては、参加罪または共謀罪を設ける必要があると考えているところであります。
    〔委員長退席、早川委員長代理着席〕
○平岡委員 ここの、今私が先ほど来から読み上げているところが、オーバートアクトを念頭に置いたものだと。それはまあ念頭に置いたのだろうと思います。
 でも、それでなければいけないというのは、根拠はどこにあるんですか。我々には条約の交渉過程の公電も見せてもらえないのでわかりませんけれども、これがオーバートアクトしか含まないんだ、それ以外の準備行為、予備行為というのは含まないんだという根拠を示してください。何を見たらそういうことが書いてあるんですか。この条約の交渉過程の中でそういう議論が行われて、これはオーバートアクトに限りましょうということで合意されているんですか。仮に合意されているとしたって、この条約の中でどれを見たらそれはオーバートアクトに限られるというふうに認識するんですか。
 これは通告をしていませんから、大臣にはちょっと難しいかもしれません。刑事局長でも外務当局でもいいです、オーバートアクトに限られるということの条約交渉上の根拠あるいは条約上の根拠、これを示してください。
○神余政府参考人 突然の質問でございますけれども、できる限りお答え申し上げたいと思います。
 本条約にあります「合意の内容を推進するための行為」は、先ほど御答弁がありましたように、オーバートアクトを念頭に置いたものではございますけれども、ただ、そのオーバートアクトとこの予備行為というものがどういうふうに違うのか、あるいは、その実行の着手前の行為という点では確かに共通しておりますけれども、共謀罪の成立の要件としてオーバートアクトのかわりに予備行為を要求することが条約の趣旨に反するか否かといったことにつきましては確たる定義はございませんけれども、これにつきましては、予備行為の概念というものをいかに解するかによるものというふうに考えております。
○平岡委員 場合によっては、我々は、ここに書いてあることは、我が国で言うところの予備行為、準備行為ということが該当するんだという解釈宣言なり留保なり必要な行為をすることによって国内法の体系と合わせていく、そのことも私は可能だろうと思います。
 それはさておいて、この顕示行為、オーバートアクトについては、立法化に当たってそういうことを伴うことを認めておって、ある国ではそうしたこともしているというふうに聞いていますけれども、どんな国があるんでしょうか。オーバートアクトを国内法制化において要件としている国としてはどういうものがあるんでしょうか。
○小野寺大臣政務官 御指摘のような立法を行った国としましては、オーストラリア、ロシア、フィンランド、ラトビア、サウジアラビア等が挙げられます。○平岡委員 それらの国々においてオーバートアクトというふうに位置づけられているのは、この条文で書いてあることと全く同じ内容になっているんですか。どうですか。
○小野寺大臣政務官 各国がその国内法においてどのような形で規定をしているかの詳細については承知しておりません。
○平岡委員 各国がどういうことをもってオーバートアクト、皆さん方が言っておられるものとして、解釈通告なのか留保なのか知りませんけれども、としているのか、これは必ず調べてください。各国がどういうふうにこの条文に基づいた要件というものを、オーバートアクトと言われているものについてどういうふうに規定しているのか、これを調べていただきたい。お願いできますか。
○小野寺大臣政務官 時間をいただければ、誠意を持って対応させていただきたいと思っています。
○平岡委員 まずその調査をしっかりとしていただいて、また委員会に報告していただく。そして、我々も、我が国の法体系に合うような仕組みでこの国内法制化を図っていくということを一緒に検討していきましょう、そしていい案を来通常国会に出していくように努力しましょうということで、さらにもっと指摘しなければいけない点があるので、次のところに行きたいと思います。
 これも七月十二日の同僚議員の質問の中に、TOC条約で重大な犯罪とされる我が国の犯罪のうちで、越境性の可能性のあるものとないものとを区分してくれというふうに要請をし、そしてこれに対して、統計的な数字で示せれば示してまいりたいと当時の富田大臣政務官が答えられております。
 「これまでに具体例があったのかというようなものは、裁判例なり、法務省の方にもし統計があれば、それはお出ししたいと思います。」それに対して同僚委員が、「では、それは必ずきちっと出してください。」というふうにして、そのやりとりが終わっているわけでありますけれども、これはどういうふうな結果が出ていますか。それをお示しください。
○大林政府参考人 恐縮でございます。
 御質問の、国際的な組織犯罪を行っている、または行う可能性が高い団体としては、暴力団や外国人犯罪組織、あるいは、いわゆるやみ金融会社や組織的詐欺商法を行う団体などが一般的には想定されるところだと思います。しかしながら、このような団体そのものの把握を目的とした調査は行っていませんので、団体の数を挙げるということは困難であることを御理解いただきたいと思います。
 しかしながら、法案の共謀罪における組織性の要件は、現在の組織的犯罪処罰法において組織的な殺人等を加重処罰する場合の要件と同じでございまして、これまでにこの要件を満たした事例として承知している団体の例は五十数件、そのうち七割弱が暴力団で、残りは賭博場や詐欺会社などとなっております。御承知のとおり、この犯罪は今からつくるもので、これから摘発例が出るわけでございますが、今の団体の定義をしている前提としては、そのようなものが見られているところでございます。
 なお、具体的な資料化ができるものであれば、努力して、また検討させていただきたい、このように思います。
○平岡委員 今の答弁は、私が質問したこととは別のところの答弁だったので、それはそれで後で聞こうかと思っていましたから、今刑事局長が言われたように、資料化して提出していただきたいというふうに思います。
 今のは組織犯罪集団のところの質問なんですね。私の今の質問は、ちょっと質問の分野が違って、重大な犯罪のところの質問なんですね。
 我が国において重大な犯罪とされる我が国の犯罪のうちで、越境性の可能性のあるものとないものとに区分してくださいという話として、当時の富田大臣政務官が、「法務省の方にもし統計があれば、それはお出ししたいと思います。」ということで答えられて、それではきちっと出してくださいねと当時の同僚議員が言われたんですよ。今その同僚議員はここにおられませんから、私がかわりにそこをちゃんと、我々は継続性を持ってしっかりと答弁をチェックしていくんだ、そういうつもりで言っているんですけれども、副大臣、お持ちならお持ちで、言っていただければ。なければないで、後日またで結構でございますから。
○富田副大臣 済みません。今手持ちがありませんので、しっかり調査したいと思います。
○平岡委員 それでは、そういうことでお願いいたしたいと思います。
 そこで、この重大な犯罪というものがどういうものかということについての議論がありますけれども、今回は、自由刑として長期四年以上の自由刑またはそれ以上の自由刑だというような形で、非常に無味乾燥なといいますか、どんなものがどう当たるのかがさっぱりわからないような話になってきているわけであります。
 この条約交渉会合においては、リスト方式、どういう犯罪が重大な犯罪として、国際的な協力をしていくあるいは国際的な組織犯罪として防止されていくべきなのかということが議論されたという経緯があったと思うんですけれども、これについて、これまでの交渉過程の中で、どういうものがリスト方式として主張されたんでしょうか。どういうものがそのリストの中で示されていたんでしょうか。
 この点についての例を、例えばこういうものがありましたと、例えば、第十回のアドホック委員会会合ではリスト方式を主張する国の共同提案が出されたというようなことも皆さん方の報告の中から聞いておるんですけれども、どんなものが出されたんでしょうか。
○小野寺大臣政務官 第二回会合の条文草案においての犯罪リストの案が示されたという中には、一九八八年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約で規定されている不正な麻薬または向精神薬の取引及び資金浄化や、文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約により規定されている文化財の不法取引及び窃盗、そしてテロ防止に関する国連条約に含まれる行為等が含まれておりました。
○平岡委員 今、一つの例として挙げていただきましたけれども、第十回会合においても、リスト方式を主張するアルジェリア、エジプト、インド、メキシコ、それからトルコからも、こういうものを挙げてはどうかというようなことで提案があったというふうに聞いております。
 こういった提案に対して、我が国としては、どのような問題があると認識して、どのような対応をしたんでしょうか、外務副大臣。
○小野寺大臣政務官 我が国としましては、本条約の対象となる犯罪をリストによって定めるリスト方式について、リストに含むべき犯罪選別の議論に多大な時間を要し、コンセンサスを得るのが困難であること、多様な活動を行っている犯罪組織への対応に柔軟性を欠くことなどを考えまして、適当でないと考え、これに反対の立場で臨みました。
○平岡委員 私は、ある意味では、国際的な組織犯罪として国際的に協力しなければいけない犯罪というのはおのずと限度があるんだろう、限界があるんだ、範囲があるんだろうというふうに思うんですよね。
 今回の長期四年以上の自由刑には国内法でどんなものがあるかというのは、資料として出てきていますから見るとわかるわけでありますけれども、例えば、特別公務員の暴行陵虐罪であるとか、あるいは公職選挙法であるとか最高裁の国民審査に違反するような話とか、そんなものまで全部これは入っちゃっているんですね。こんなものまで本当に国際的組織犯罪防止のための犯罪として国内法制化する必要があるんですか。どうですか。
○大林政府参考人 法務省といたしましては、組織的な犯罪集団は、みずからの組織の維持拡大のため、種々の利益を求め、手段、方法を選ぶことなくあらゆる犯罪活動を行うという特性を有することから、組織的な犯罪集団が将来実行し得る犯罪を漏れなく記載したリストを作成することは現実的に困難であると考えました。
 他方、法定刑は、それぞれの犯罪類型ごとにその違法性の高さや責任の重さに応じて定められるものであることから、犯罪の軽重を図る尺度として一定の合理性を有することを考慮すると、これを基準として、一定の重さ以上の刑期が定められている罪を対象とすることには合理性があると考えておりました。
 そこで、リスト方式によるのではなく、各国の国内法において定められている法定刑を基準として重大な犯罪を定めるべきとする主張を支持することが適当であると考えたものでございます。
○平岡委員 今六百十九の罪状が長期四年以上の自由刑またはそれ以上にあるというふうにありましたけれども、それぞれどういうことが考えられるのか、今ここで出してくれと言われてもすぐに出ないと思いますけれども、ちょっと教えていただけませんか。
 私にはどうしても、こんなものが国際的組織犯罪防止のために重大な犯罪としてここの中に規定されなければいけない犯罪だとは到底思えないものがあるんですよね。こんなものまで国内法制化したら、これは後世の笑い物になると私は思いますね。これは何のための立法なのか、そこのところをわきまえてやらなければいけないというふうに思うんですね。
 そういう意味では、やはりもっともっと抑制的にこの犯罪を特定していくということが必要だというふうに私は思うんですけれども、何か手を挙げておられるので。
○大林政府参考人 前から御説明しているとおり、四年以上、確かに、委員がおっしゃるとおり非常に大きな数にわたります。ただし、共謀罪の性質としては、先ほど申し上げましたように、団体性、いわゆる組織犯罪集団というものを頭に置いておりますので、要するに、その人たちが利益を得るためには、例えば公職選挙法においても、その利益のために特定の違反を行わせるということは抽象的には考えられるわけです。
 ですから、確かにリスト方式というのも一つの方式ではございますけれども、一つ一つを挙げていった場合に、では、絶対あり得ないのかという議論になりますと、これはなかなか難しいということでございます。
 ただ、委員が今おっしゃっている、では、具体的にどういうものがあるか、これは私の方で用意して御説明させていただきたいと思います。(発言する者あり)
○平岡委員 今同僚議員の方からも発言がありましたけれども、組織性だけの問題じゃないんですね。この条約に基づいて国内法制化をとるという意味において、我々はもっともっと限定的に考えていますから、国際性があって組織性があるその犯罪として、それぞれの罪状に基づいてどんなことが考えられるかということをお尋ねしたいということなので、そういうふうな視点でちょっと整理していただきたいと思います。
 ただ、私がちょっと思うのは、国によっては、長期四年以上の自由刑あるいはそれ以上というのは多分まちまちなんだろうと思うんですよね。ある国ではそれは該当するけれども、ある国では該当しない、そんなことがたくさんあるんじゃないかというふうに思うんです。国際的な捜査共助が必要だということで仮に重大な犯罪を特定していくとしたら、そんな犯罪がまちまちなものをどうやって円滑な国際共助ができるんだろうか、私はそういう疑問を持つのです。
 そういう意味でいったら、それは確かに作業は大変かもしれませんけれども、こういう犯罪が本当に国際的な組織犯罪として捜査協力をしていかなきゃいけないものなんだ、こういうような特定の仕方をしていくことが、私は、本来求められる立法作業じゃないかというふうに思うんですね、あるいは条約作業だろうと思うんですね。
 そういう意味において、長期四年以上ということで国内法制化をしたら、犯罪がまちまちになってしまう。このことから生じてくる問題というのはあるんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。これは一応通告してありますから。
○南野国務大臣 各国が自国の法定刑を基準として共謀罪の対象となる犯罪を定める場合には、一部の罪について、ある国では共謀罪が成立しますけれども別の国では成立しないこともあり得ることは、先生御指摘のとおりでございますが、この条約の義務に従いまして、少なくとも、各国におきまして重大な犯罪に当たる犯罪の共謀が犯罪とされることにより、多くの場合はすべての国において共通して共謀行為が犯罪となることとなると考えられております。
 したがいまして、多くの場合に、国際的な捜査共助の要件である、要請国においても被要請国においても犯罪に当たるものであること、これを双罰性と言うようでございますが、これが満たされることとなれば、国際的な捜査共助が促進されることとなるものと考えております。
○平岡委員 だから、長期四年以上の自由刑またはそれ以上というような形でやる場合には、それが該当するのか該当しないのかとか、国際的な捜査にも大変混乱を来すような話にもなってしまうわけで、やはり本来あるべきは、国際的な組織犯罪を防止するために本当に必要な犯罪というのは一体何なのかということを吟味して、そしてこういうものをつくっていくべきだということを申し上げたいというふうに私は思うんです。
 時間がちょっと限られてきたので、あと、どうしても聞いておきたいところを二点だけ質問させていただきたいと思います。
 一つは、自首減免の話なんですけれども、今回の共謀罪については自首減免規定というのが置かれています。先ほど来から私が申し上げているように、そもそも、この共謀罪という犯罪類型をつくるということ自体が、私は、監視社会あるいは管理社会というものをつくっていくんじゃないかというような不安を持っているわけでありますけれども、これほど多くの罪について自首減免制度というものをつくっていくということは、そういうおそれが非常に高いんじゃないか、なおさら高いんじゃないかというふうに私は思うんですね。仮に自首減免ということを認めるとしても非常に限定的であるべきだ、こういうふうに私は思うんです。
 そういう意味では、仮にその共謀が実行に移された場合には、被害が広範、重大で、かつ、事後の回復措置をとることが困難なもの、こういったものに限定して自首減免を考えていくべきだというふうに思うんですけれども、大臣、その点いかがでしょうか。
○南野国務大臣 共謀をした者が実行に着手する前に自首した場合に、刑を軽減し、または免除することとしているのは、これは、自首を奨励し、共謀に係る重大な犯罪が実行されることを未然に防止しようという政策的配慮に基づくものであると思います。
 このような規定を設けることは、共謀に係る重大な犯罪を未然に防止するため、共謀罪または参加罪の犯罪化を義務づける条約の趣旨に沿うものでありまして、また、この必要性は重大な犯罪とされる各罪において変わるところはございませんので、一律にこれを設けることとしたものでございます。
○平岡委員 だから、私は、こういう一律に設けるという発想そのものが、やはり監視社会、管理社会をつくっていくということになる。なぜこれをつくらなきゃいけないか。一たん被害が起こったときに、回復しがたい被害であったり、あるいは物すごく広範かつ重大な被害が起こったりとか、そういうものに限定して、本当に必要性があるものに限定していくべきだということを指摘しておきたいと思います。
 時間がないので、もう一つ捜査に関連して申し上げます。
 私は、先ほど共謀罪で出ましたけれども、イギリスとかアメリカなんかでは、捜査あるいは取り調べにおいて可視化というものが行われている。それはすべてじゃないかもしれませんけれども、そういうふうな形で、例えば、今回の共謀罪について言えば、どういうものが共謀の証拠になるのかというようなことを考えていったときには、非常に恐ろしい取り調べが行われる可能性もあるような気がするんですね。例えば、自白が強要されたり、あるいは誘導的な取り調べが行われたり、こういうことが非常に懸念されるわけです。
 そういう意味でいったら、従来から民主党の方では、取り調べの可視化ということを主張して、その関係の法案も提出したことがありますけれども、私は、この日本においても、この共謀罪ということとは離れてでも当然に妥当するのでありますけれども、仮に共謀罪というようなことが非常に限定された範囲内でつくられるとしても、ぜひ、この捜査、取り調べの可視化ということをやっていかなければいけない。そうしなければ、お互いに、取り締まる側の方も、逆に今度は、自分たちが本当にちゃんとした取り調べをしているというふうに世の中の人たちから見てもらえるんだろうかという逆の不安もあるんだろうと思うんですね。
 だから、この点についてぜひ実現させていきたいと思うんですけれども、南野大臣の見解を伺いたいと思います。
○南野国務大臣 共謀の存在というものは、取り調べによってその自白を獲得しなければならない、またならなければ立証できないというものではありません。
 例えば、犯罪計画書などの合意に関する物証や周辺事情、共謀の状況を聞知した者からの情報提供などによって合意の存在が裏づけられることもあると考えられます。このことは、既存の犯罪の共謀を立証したり、密行的に行われた犯罪を立証する場合においても同様であり、共謀罪の創設によって特殊捜査のやり方が変わるものではない。
 したがいまして、共謀罪が創設されれば、強引に自白を獲得することになるというものではないと考えられますが、先生から可視化という御質問をいただきました。
 取り調べの状況の録音、録画等につきましては、司法制度改革審議会の意見においても、刑事手続における被疑者の取り調べの役割、その関係で慎重な配慮が必要であり、将来的な検討解題とされていると思います。したがいまして、法務省といたしましても、この問題につきましては、刑事司法制度のあり方全体の中で慎重に検討することがあると考えております。
 以上でございます。
○平岡委員 この共謀罪については、まだまだ多くの論点があるだろうと思います。我々としては、今回の政府の法案というのは、基本的には、この条約を国内法化するに当たって、よりもっと一歩捜査の範囲を広げていって、監視社会、管理社会みたいなものをつくっていこう、何かそういう下心があるのではないかと、多分持っていないでしょう、大臣が持っていないと言われたから持っていないと思うんですけれども、一般の市民の人たちはそう思っている人が多いんですよ。
 そう思っている人が多いので、そこは自制的な国内法制化を行い、そして必要があるならば解釈宣言を出す、あるいは留保をする、そういうことも含めて、改めて立法化を考え直していただきたい、私はこのことを今回の第一回目の質問では要求させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
○早川委員長代理 次に、石関貴史君。

~後略~

ん~答弁も質問も、不充分。平岡さんも外務省からの答弁によって引き出そうとせず、もっと他のルートから集めた情報を法務省や外務省にぶつけていかないと。

benetoncondom@hotmail.com
関組長


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Posted by 関組長 at 14:30 │法務委員会
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