てぃーだブログ › 元は、関組長の東京・永田町ロビー活動日記【ブログ版】 › 保健婦助産婦看護婦法案 昭和23年6月の厚生委員会

2006年06月08日

保健婦助産婦看護婦法案 昭和23年6月の厚生委員会

昭和23年6月24日 衆議院 - 厚生委員会 - 会議録より

○山崎委員長 次に医師法案、歯科医師法案、保健婦助産婦看護婦法案、歯科衞生士法案及び医療法案を一括議題といたしまして、審査にはいります。発言は通告順にこれを許します。福田君。
○福田(昌)委員 医療関係の教育施設また営業施設というものが非常に高い水準に引上げられまして、從つていろいろな法案を新しくきめなければならないというようなことに対しまして、政府も非常に困難をせられただろうと存じまするので、そういう点を考慮いたしまして、なるべくその御苦衷に御同情申し上げて、私の質問はなるべく控えさせていただきたいと存じましたが、この保健婦助産婦看護婦法案におきまして、こういうように一般の教育程度を高くさせていただきますと、この学校の制度になつてから、一体看護婦や、保健婦や助産婦になる人が現状のような数においてあるかどうか。またもしそうでない場合においてはどういう対策を御考慮になつておられるのであるかというようなことについてお伺いいたしたいと思います。
○久下政府委員 お話の通りに新しい法案におきましては、從前と比較いたしまして看護婦、保健婦、助産婦の基礎的な素養を非常に高めておるのであります。從來の実績から見まして、十分にこれら必要な人々が得られるかどうかということにつきましては、法案立安にあたりまして、私どもといたしましても、十分考慮をいたしたつもりでございます。まずこの問題に対しまして、そういう考慮に基く処置として考えておりますことは、この法案の全面的な施行が看護婦につきましては昭和二十四年、保健婦、助産婦につきましては昭和二十五年ということに相なつております。これによりまして、その間におきましては從前の規則が働いてまいりまして、從前の看護婦、保健婦、助産婦等が生れてまいるものと考えておるのであります。かように法律施行の時期に経過的に期間が設けられておりますほかに、法律が新たに施行せられまして、從前の看護婦、保健婦、助産婦はいずれも從來通りその業務に從うことができるようにいたしてございますので、現制度のもとにおける看護婦、保健婦、助産婦が少くとも数年間あるいはそれ以上業務に從事することによりまして、経過的には問題がないものと考えておるのであります。さらに私どもといたしましては、その間におきまして十分新しい制度に基く養成施設の普及に努めたいと思つておりますし、現在すでにその処置を講じているのでございます。こうすることによりまして新しい施設を設け、同時にまた一般の國民の間に保健婦、助産婦、看護婦の新しい意味における使命というものを十分徹底いたしまして、そうして希望者をできるだけ多くするようにいたしたいと思つているのであります。さようないろいろな措置を総合いたしまして、大体この法案の実施は御質問にございましたような心配はまずないものと思つているのでありますが、さらに最後の段階、ここ数年の推移を見守りまして、また実際問題として医療上必要が起るようなことになりますれば、そのときに処置を講じたいという氣持をもつているのであります。
○福田(昌)委員 こういう高い教育課程になりますと、相手学費等もかさむと思いますが、そういう学費に対しまして、國家は何か援助するようなお考えをおもちでございましようか。
○久下政府委員 看護婦、保健婦、助産婦につきましては、御承知の通りに多くのものは、保健婦は別でございますが、看護婦、助産婦につきましてはそれぞれ病院の附属施設としての養成機関がございまして、かような所におきましては学習に要します費用はその病院において支給しますほかに、若干の小遣いまでも出しておるのが実情でございます。かような制度は今後とも程度が高くなりましても続けていきたいと思つておるのであります。保健婦につきましては、現在大部分は各府縣の施設によりまして養成が行われております。実質的にはやはり同樣の措置がとられております。そのほかにも女子の專門の学校が設けられることを期待しておるのであります。これらの学校には、余力のあります人々にはいつていただくという結果になるかもしれません。必要数の確保のために、今申したような病院附属の施設、あるいは公共團体の施設等におきまして、学費をあまり要せずに養成のできるようにしたいと考えております。
○福田(昌)委員 こういうような高い制度の学校を卒業いたしました曉の保健婦及び助産婦、看護婦などにおきましては、いきおい待遇の改善というようなことが大きな問題となると思いますが、そういうことに関しましてどういうふうにお考えでありますか。
○久下政府委員 待遇の改善につきましては、かような制度になりますれば、社会的に十分その認識がなされまして、待遇が改善されていくものと思つておるのでありますが、一般に現在の看護婦などにおきましては、現状におきましてもすでに待遇が非常に低い実例でございます。これらにつきましては現行の制度のもとにおきましても、待遇の改善を特別にするように、今考慮をいたし折衝をいたしつつあるのでございます、これらが実行に移されますれば、將來程度の高くなつたものが出てまいりました場合には、それらのものは追養の高い程度につれて、待遇の改善が行われるものと思つておるのであります。
○福田(昌)委員 御説明いただきましてほぼ了解はできましたけれども、私といたしましては一つ懸念することが残つておるのでございます。それはこういうような高い教育制度をつくる状態におかれておる今日、仰せのように現状の保健婦や看護婦、助産婦の方の待遇はあまりにも低い地位におかれております。ですからそういう方々の現状を見ましたならば、これから保健婦や看護婦さんに長い年月を要し、高い教育費を費してなろうという人が非常に少くなるだろうと思うのであります。從いまして二十五年、二十六年の制度から新たに入学されて保健婦、看護婦、助産婦になられる方は非常に数が減つて、病院や診療所におきまして、いろいろ事務の刷新上困難を來すほど人員が減つてくるのではないかということを懸念いたすのであります。從いましてまず第一番に今日の保健婦や看護婦、助産婦の方々の待遇を早急に大幅に引上げていただきたいと思うのであります。地方におきましては保健所やあるいは学校などに勤めておられる保健婦さんなどが三級官にもなれない、いつまでも補助の地位に甘んじていなければならない、十年以上も勤めた人がようやく三級官になれるというような、きわめて低い地位において働かされておるということを考えますときに、こういうことが從來の保健婦さんの発展あるいは看護婦さんの発展に対して、非常な障害となりますから、早急にこういうことを改めていただきまして、もつと高い待遇を與えていただきたいと思います。またこの保健婦という職業におきましては、いきおい出張旅費が非常に多くなるのでありますが、そういうような場合にも出張旅費が少くて、まじめに働けば働くほど足が出るというような状態であります。從いまして、なかなか仕事をしないというような現状でありますので、そういう方々に十分に働いていただくためにも、この出張旅費その他の手当というものを早急に御考慮いただきたいと思うのであります。そういうような待遇改善のことを私は早急にお願い申し上げたいと思います。
 次に二十條でありますが、「助産婦國家試驗は、甲種看護婦國家試驗に合格して者」云々というところの第一項に「文部大臣の指定した学校において一年以上助産に関する学科を修めた者」となつております。助産婦というような仕事は、まじめに考えますと一年くらいの修業期間では完全な技術は覚えにくいものでありますが、これを一年以上とおきめになりました動機はどういうところにありますか。
○久下政府委員 最初の御意見にございました看護婦、保健婦、助産婦の待遇の改善につきましては、現状においても私ども十分努力をいたしておるつもりでございますが、なお御趣旨に從いまして今後も十分な努力を拂いたいと思います。
 第二点のお尋ねにございました助産婦の修業期間を一年といたしました理由でございますが、この法文で御了解をいただきますように、助産婦として必要な基礎的な素養は、ほとんど大部分が看護婦としての素養と同樣であると考えております。從つて甲種看護婦としての三年間の素養を要求いたし、その上にさらに助産婦として特に專門的に必要なことだけを一年やるという意味でございますので、この程度におきまして一年やりますれば、十分であると考えておる次第であります。なお御参考に申し上げますれば、從來とも助産婦になりますのは、小学校の高等を出まして、二年間勉強をすれば、助産婦の免許が與えられておつたのでありまして、それらとの関連においても大体これで十分であると考えておる次第であります。
○福田(昌)委員 第三十七條でありますが、「保健婦、助産婦又は看護婦は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合の外、診療機械を使用し」云々ということがありますが、このような高い程度の教育施設を経てきた看護婦、保健婦、助産婦の方に、はたしてなおこれほどの嚴格な医師及び歯科医師の指示というもののわくにはめて、こういう保健婦、看護婦の技術を縛る必要があるのでございましようか。
○久下政府委員 三十七條に掲げましたような業務は、いわゆる医業に属することと考えておるのであります。一般の医業に関する教養の要求をしておりませんこの種の人々が、医業を行います結果になりますことをおそれまして、かような規定を設けておるのであります。こういうことをいたさなくても、保健婦なら保健婦、助産婦なら助産婦としてそれぞれその法律に掲げております任務を行つていきます上には、多くのなすべきことがあると思うのでありまして、これらの人々が医師、歯科医師と相協力し、提携してはじめて医療が全きを期し得るのであると考えておる次第であります。
○福田(昌)委員 現状におきましても、すでに産婆さんなどはお産の場合に直面いたしまして、注射をし、あるいはまたいろいろ最小限度の機械的な処置を加うておるのであります。もちろんそれは黙認の状態にあるのでありましようし、看護婦におきましても、皮下注射あるいはあまり危險でない靜脈注射をどんどんやつておることは、すでに衆人の知つておるところでありまして、もとよりこういうような注射の全部は許し得ないものでありますが、保健婦というような立場からいたしましては、保健の範囲内において看護婦または助産婦に注射をさせてもいい藥があるはずでございますから、ある藥の種類に限つて保健婦、助産婦などが注示することを許可することが、私は最も今日の現状に当を得た方法であると思うのであります。こういうような現状と反した方法を、しかも高い教育程度を経た保健婦や看護婦さんになお強要するということは、私は非常な間違いであるということを痛切に感ずるのでありまして、この点におきまして御訂正を願いたいと思います。
 またその先のところでありますが、「又は助産婦がへそのおを切り、かん腸を施し、この他助産婦の業務に当然附随する行為をなすことは差し支えない。」という言葉がありますが、助産婦というものは、この制度からいいますと、專門学校または大学程度の教育機関を経た人でなければなれない状態でありますが、そういう高い助産婦をねらいながら、厚生省でこういうような言葉を使われるということは、結局において、厚生省でこの案をおつくりになりましたその根柢というものは、この高い教育施設というものが形式的なものであつて、その根柢において助産婦というものを非常に軽視した氣持においてつくられたということがありありとわかるのでありまして、こういう根本的な、産婆自身、または保健婦自身、看護婦自身を低めた地位に置くという、そうした精神的な軽蔑の氣持をまず第一に拂拭してもらいたいと思うのであります。從いましてこういう小学校の生使が使うような「へそのお」というような言葉を使われるということは、はなはだ私どもにとりまして心外であります。早速御訂正願いたいと思います。
○久下政府委員 御質疑の第一点につきましては、三十七條の但書、また三十八條の但書にも、いずれも臨時應急の手当をなすことは差支うないという規定がございますので、それによりまして御質疑の点は目的を達し得るのではないかと考えております。
 次のはなはだ小学生の使うような言葉を使つておるというようなお話でありますが、実はこういうような言葉を使わざるを得なかつた理由は、政府の方針として漢字制限が行われまして、從來法律には漢字で臍帶と書き、かん腸という言葉もちやんと漢字で浣腸という字があつたのでありますが、それらはいずれも漢字制限で使えないことになりまして、「さいたい」とかなで書きましては何のことやら意味がわからないであろうというようなことで、俗に使われておりますような言葉を使いました次第であります。決してこれらの方々の身分を軽視するというような意思は毛頭ございません。御了承願いたいと思います。

昭和23年6月24日参議院 - 厚生委員会 =省略

昭和23年6月25日衆議院 - 厚生委員会 =省略

昭和23年6月26日衆議院 - 厚生委員会 - 会議録より

○武田委員 処方せんの問題はそれだけにいたしまして、次に保健婦助産婦看護婦法につきましてお尋ねしたいのでございます。保健婦と助産婦との業務の内容につきまして、本法の二條に「保健婦の名称を用いて、保健指導に從事することを業とする」と書いてございます。三條の助産婦の方は、ただそれに「助産又は妊婦、じよく婦、若しくは新生児の保健指導」こういうふうになつておりますが、保健婦はそうしますと、助産ということには全然触れることはできないのでございますか。
○久下政府委員 お説の通りでございまして、保健婦は助産ができない。
○武田委員 今地方にずいぶん保健婦がおります。保健婦は一般の指導でございますから、もちろん妊婦や産婦、幼兒というような者の指導にも当るわけでございますが、その場合に保健婦がもし出産に面した場合には、救急、應急の処置として出産を取扱うことができましようか。
○久下政府委員 お話の問題は保健婦の業務と重複しております助産婦の業務すなわち「妊婦、じよく婦若しくは新生兒の保健指導をなす」ということにあると思うのであります。お説の通りに、保健婦は内容的には対象に限定がなく妊婦、じよく婦、もしくは新生兒の保健指導をすることができる。そういう意味におきまして妊婦またはじよく婦の指導をしておつた場合には、保健のことは助産婦にはできません。しかしながら助産婦を呼ぷこともできない、あるいは急に呼ぴにいつたけれども、助産婦がおらなかつたというような場合に、緊急の処置として何らかの処置をいたしますことはやむを得ないと考えております。これはあくまでも後の規定にございます臨時應急の手当ということで考えたいと思つておるのであります。
○武田委員 次に助産婦の應急の処置ということにつきまして、今までのところでは大体應急の処置と申しましても、藥を使うこともできなければ、注射をすることもできないのでございますが、この助産婦の應急処置ということになりますと、私は手当に対してもう少し廣い範囲のものが許されてよいのじやないかと思います。
○久下政府委員 御指摘の点については、今後は助産婦の教育程度も非常に高まつてまいりますので、これらの助産婦が実際妊産婦を取扱い、助産の仕事をいたします場合には、從來と違つて十分に安心をして任せることができることが多くなると思うのであります。そういうような意味合において、臨時應急の手当というものを、さような制度の変改に應じまして、解釈を変えていくことは当然のことと思います。具体的な例で申しますれば、産婦に対して強心剤を注射するというようなことの必要が場合によつては起きてくると思います。これらは臨時應急の手当ということでできるように処置いたしたいと思つております。
○武田委員 そうすると、今の点をもう少しつつこみまして、今の臨時應急の手当には、注射としては強心剤の注射は認めて――もちろん臨時應急の手当でございますが、そのほかは止血の注射などはどういうことになりますか。
○久下政府委員 これは具体的な場合の解釈でございまして、非常な大出血をしておりますときに、一体注射だけでよいかどうかという問題もありましよう。私は医学の方面はあまり明るくありません。私の方においても、具体的にそれではどういう場合だけをこの場合に解釈するかというところまで限定的な、確定的な解釈はきまつておりませんので、はつきりした御返事が申し上げられぬことははなはだ遺憾に思いますが、要するに、先ほど申し上げましたような精神によつて十分相当のことまでできるようにしなければ、実際その産婦の命にかかわるというようなときに、この解釈を窮屈にすることによつて手当が遅れるということはおもしろくないと思います。できるならば私どもとしては、そうした正常産が異状産に変化してまいりましたような場合においては、あらかじめ他の規定で予測しておりますように、常に助産婦は嘱託医をもつておりまして、そうして必要な場合には嘱託医に來てもらえるようにすることを規定しておるのであります。本則的に申しますれば、そういう状態が見えましたらならば、できるだけ一刻も早く本來の医師を呼んで來て手当をしてもらうことを期待しております。それもいろいろの場合でできない場合もあろうと思います。それだからと言つて、ある程度の判断がつくにもかかわらず、放つておくということはもちろんとるべき措置でないと思います。いずれにいたしましても、そうした他の條件も加味されて、具体的な判断がくだされるものと思いますが、これらの点については、なお具体的な研究もいたしますが、要は助産婦としての任務を正しく認識し、なお健全なる常識をもつて運用するというような精神で、具体的な場合を処理していただくよりほかないと思つております。
○武田委員 ただいまのような場合に、助産婦の方でも、まつたく妊産婦の命を救うというふうなときにとれます処置には――これらの助産婦というものは、今までとは違つて非常に高い教育と、そうしてそれだけの資格をもつた者でございますから、それがある程度までのことはできるようにお考えをいただきたいと思います。もちろん藥などにおきましても、十分その点については御配慮いただきたいと思います。私はこの助産婦の仕事というものは、ここに保健婦と看護婦と助産婦とがひとまとめにして一本の法律になつておりますけれども、元來これは別個のものにして、助産婦法というものをひとつつくつていいものではないかと思うのであります。歯科医師にしましても、獣医師にしましても、あるいは歯科衞生士というようなもので別個の法律がございますのに、助産婦は保健婦とは立場が違つて、ごく一部分ではございますけれども、人の命を預り、これを生かし、かつもし死産などの場合でありますと、死体の檢案書まで書く立場になつておるのでございますから、この仕事は内容、性質からいいましても、医者、歯科医師などと同じような性質のものではないかと思います。この法案では保健婦助産婦看護婦法とこうなつておりますが、この意味から申しますならば、助産婦というものを一番上に置いて取扱うべきであり、あるいはさらに別の法律として助産婦法というものを設けるのが至当ではないかと思いますが、この点はいかがですか。
○久下政府委員 助産婦を別個の法律をもつて取扱うべきであるという御意見でありますが、私どもといたしましては、この内容で御了解いただけますように、助産婦と保健婦と看護婦とは、基礎的な素養においては大体重複する面が多いのでございます。そういう意味合におきましては、助産婦教育の前提となります三年間の教育は、看護婦と保健婦はいずれも同樣にしております。言い換えますと、保健婦になりますためにも、助産婦になりますためにも、看護婦になりますためにも、いずれも三年間の共通の教育機関が必要である。その上に助産婦としての特別の教育をすれば十分である、保健婦は保健婦としての教育を受ければ十分であるという考えのもとに、この全体の構成をいたしておりますので、さような意味から申しますと、それぞれの内容におきまして、重複する面が非常にたくさん出てまいります。同時にまた婦人の業務でもありますので、それらの面からも一緒に取扱いまして少しも差支えないものと思つている次第であります。
 それから次に、助産婦を別扱いにする理由として、名祢の組み方の順序などについても御意見がありました。この点については、私ども別にこだわつて考えているわけじやないのでありまして、むしろこれは見解の相違になるかもしれないと思いますが、助産婦は、お話の通りきわめて重要な任務をもつているものと私どもも理解をしております。また保健婦も別の意味におきまして、助産婦とはその任務は違いますが、任務が違うだけに、また別の考え方において重要だと言われるのであります。言葉の順序が先になつているものが重要であるというようなことは毛頭考えておりません。さような趣旨に御了承いただきたいと思います。
○武田委員 助産婦を保健婦と同一の法案の中に編まれたということは大体了承いたしました。この医者、助産婦などの應招義務の不履行といいますか、正当の理由なく應招に應じなかつたときには罰則がないのはどういうわけでありますか。
○久下政府委員 應招義務の違反に対する罰則をとりましたのは、この種の人々が相当高い教育――助産婦にしても新しい制度においては、大学程度の教育を受けなければならぬ。医師、歯科医師については、一般の大学の教育のほかに、さらい二年ないし三年の特別な教育を必要としております。さような高い教育を受けた者でありますので、おのずからその間においてこの種の仕事については、その人々の倫理感として、当然守つていただくことが期待せられるというのが第一の考え方であり、またこの種の性質の事柄は、そういう意味において運用することが適当であると考えまして、從來ありました罰則を削つたのであります。しかしながらあえてこの規定に違反するような行動に対しては、いずれもその業務の停止、あるいは免許の取消しなどの処分を行い得ることにしておりますので、不当に世の指彈を受けるような処置をとりました者については、そうした行政処分の規定の活用によりまして、さような問題の起きないように処置したいと思つております。
○武田委員 先ほどちよつと聞き漏らしたのでありますが、助産婦が出産の処置をいたしましたときに、先ほどのように医師の方の連絡がとれないで、大出血などをした場合には、どういうふうに処置をとつたらいいのかお伺いいたします。
○久下政府委員 助産婦は從來からもそうでありますし、この法律においても結論として正常産だけを扱えるという観念でございます。助産婦は第三十八條の規定によりますと、「妊婦、産婦、じよく婦、胎兒又は新生兒に異常があると認めたときは、医師の診療を請わしめることを要し、自らこれらの者に対して処置をしてはならない。」こう書いてあります。すなわち異常のある場合には医師の診療を請わしめなければならないということが原則になつておるのであります。從いまして先ほども申し上げましたように、異常のある産婦を取扱います場合には、あらかじめそういうことを予想いたしまして、助産所の開設者である助産婦はあらかじめ嘱託医をきめておく。嘱託医と申しますのは、こちらがお願いしたらいつでも來てもらえるように約束しておく意味の嘱託医をきめてもらうことになつております。從いましてお産に立会つておりましても、異常がある、大出血がある、あるいは心臓の鼓動がやみそうになつて命にかかわりそうダというような症状が現われましたならば、まずその家人に話をいたしまして、今申し上げました嘱託医を呼んできて、まず医者に見せるという処置を第一にとつてもらいたいのであります。さような場合におきまして、医者を迎えに行つておる間に、あるいは医者が特別な用事のためにどうしても來られないという場合もありましようし、さような場合に産婦が異常の状態にはいつてまいりますようなときは、助産婦の判断において、臨時應急の手当として、相当程度のことまでやつても差支えないと思つておるのであります。これらは先ほど申し上げたような方法におきまして、そのときどきの状況に應じて、具体的な判断をする以外にないと思つております。
○武田委員 大体助産婦は正常産を取扱つて、異常産と認めた場合には、嘱託医の方にかからせるということは、その建前でございますが、お産はほんとうに大丈夫だと思つておりますのが、とんでもないことから思わないような状態になることがしばしばあるのでございますから、この点につきましては、助産婦の取扱う範囲と申しますか、急に予測しない状態で異常産になつたり、あるいは大出血をしたりしたような場合には、十分これに対する処置ができますように、つまり医者が間に合わなくても助産婦の方でも処置ができるような程度に、これの施行にあたつて御考慮願いたいと思います。
○久下政府委員 この点は助産婦制度、医師制度の根本にふれる問題でありまして、助産婦がさようないかなる異常産においてもその処置を誤らずに適切な処置ができるようにするためには、少くとも医師と同樣の素養がありませんと、私どもは制度としては安心して任されないと思います。從つて助産婦の教育をこの程度において免許を與えます限りにおきましては、私どもとしては異常産に対してもいかなる場合にも処置しても差支えないのだというようなことを、制度としては容認するわけにはまいらないのでございます。
○武田委員 私の質問はこれで終ります。

~中略~

○田中委員長代理 この際お諮りいたします。本日議題となりました中の医師法案、保健婦助産婦看護婦法案、歯科衞生士法案、歯科医師法案、医療法案、國家公務員共済組合法案及び理容師法の一部を改正する法律案、以上はこれをもつて質疑を打切りたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田中委員長代理 御異議がなければさよう決定いたします。
 本日はこれをもつて散会いたします。次会は明日午前十時より開会いたします。
    午後五時十五分散会

○山崎委員長 次に保健婦助産婦看護婦法案、歯科衞生士法案、紙科医師法案、医療法案、國家公務員共済組合法案、予防接種法案を議題といたします。
 ただいま議題といたしました各案につきましては、討論に入るのでありますが、別に討論の通告もございませんので、討論を省略してただちに採決に入りたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山崎委員長 御異議なしと認めます。各案の採決に入ります。保健婦助産婦看護婦法案、歯科衞生士法案、歯科医師法案、医療法案、國家公務員共済組合法案、予防接種法案を原案通り可決することに賛成の諸君の御起立を望みます。
    〔総員起立〕
○山崎委員長 起立総員。よつて本案はいずれも原案の通り可決いたしました。

昭和23年6月28日 衆議院 本会議 会議録

○笹口晃君 議事日程加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、医師法案、保健婦助産婦看護婦法案、歯科衛生士法案、歯科医師法案、医療法案、国家公務員共済組合法案、榊原亨君外十名提出、理容師法の一部を改正する法律案、内閣提出、予防接種法案及び参議院提出、優生保護法の九案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異町議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 医師法案、保健婦助産婦看護婦法案、歯科衛生士法案、歯科医師法案、医療法案、国家公務員共済組合法案、理容師法の一部を改正する法律案、予防接種法案、優生保護法案
 右九案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員長山崎岩男君。
    〔山崎岩男君登壇〕
○山崎岩男君 ただいま議題となりました医師法案、保健婦助産婦看護婦法案、歯科衛生士法案、歯科医師法案、医療淡案、國家公務員共済組合法案、理容師法の一部を改正する法律案、予防接種法案、優生保護法案について、厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、医師法案、歯科医師法案、保健婦助産婦看護婦法案、医療法案及び歯科衛生士法案について申し上げます。
 國民医療法は、新憲法下の現状には適合しない点が多々あるとともに、終戦後の社会情勢の変化に対應する新たな医事制度の確立が必要でありますので、國民医療法を改正し、新たな医事法規を制定いたさうとするのが、政府のこれら法案の提案理由であります。以下、その内容の大略を申し上げたいと存じます。
 医師法案及び歯科医師法案について申しますれば、第一に、両法案は医師、歯科医師の身分法とも申すべきものでありまして、礎前の例にならい、両法案の内容は大体その軌を一にしておるのでありますが、両者の業務内容の異なるに從い、その規定の内容にも若干の差異があるのであります。
 第二に、両法案はいずれも医師及び歯科医師の職分、免許試験及び業務等内容はおおむね現行の規定を踏襲しているのでありまして、改正のおもなる点は、一、医道審議会を設けて、免許の取消、停止等に関しその意見を聽くこととしたこと二、医師といえども、歯科医業を行うためには、歯科医師免許を受けなければならないこととしたこと。三、医師または歯科医締の処方箋の交付に関する從來の規定に若干の修正を加えたこと等であります。
 次に、保健婦助産婦看護婦法案でありますが、本法案の内容は、昨年七月制定公布されました保健婦助産婦看護婦令の内容を踏襲いたしたのであります。
 本法案と從來の制度との内容の相違のおもなる点を申し上げますと、第一に、これらの医療関係者の素質の向上をはかるために、免許を受けることのできるものの資格を相当程度高めたことであります。第二に、これらの者の業務の内容でありますが、新たに助産婦は当然に甲種看護婦の業務をなすことができることとし、乙種看護婦については、甲種看護婦に比し業務の内容を制限いたすことといたしておるのであります。
 次に医療法案でありますしが、その内容は、第一に、病院の規格を引上げ、患者二十人以上の牧容施設を有するものとし、その設備等に関しても、從來よりも相当高度の基準設けたのであります。第二に、診療所につきましては、患者收容につき一定の制限を設け、また特定の場合を除き、同一の患者を四十八時間を超えて收容してはならないこととしたのであります。第三に、助産に関する施設につきましては、そのうち助産婦の管理するものは、その名称を統一して助産所と称させるとともに、その收容人員等をも制限することとしました。第四に、新たに総合病院の制度を設け、患者百人以上の收容施設を有しかつ一走診療科名を有する病院であつて、一定の完備した施設を有するものは、都道府縣知事の承認を受けて総合病院と称することができることとしております。第五に、從來すべて許可制度によつておりました病院、診療所の開設は、今後は医師、歯科医師が診療所を開設する場合は届出制度とし、その他の場合に限り許可制度とすることにいたしております。第六に、今後のわが國の医療機関の整備の点につきましては、根本的には厚生省及び各都道府縣に医療機関整備審議会を設けて、その全般的整備計画につき調査審議さぜるとともに、地方公共團体等の経営する公的医療機関を早急に整備することにつき國庫補助を行うこととし、また医療機関の運営に関しましては、主として公的医療機開中整備ざれたものをいわゆるメディカル・センタしとして、その施設を開業医の利用等に開放させ、またその修習機関として活用することとし、もつて公私すべての医療機関が一体となつて医療の普及向上に寄興し得るような態勢の確立を企図いたしておるのであります。
 次に、歯科衛生士法案について申し上げます。わが國民の多数が歯牙及び口腔疾患のために、その健康を損われている現状に鑑み、歯科医師との緊密な連繁のもとに、もつぱら歯牙及び口腔の疾患の予防処置をなすことを業とする者の資格を定め、これを普及させることによつて、歯科疾患の予防及び口腔衝生の向上をはからんとするのが、政府のこの法律案を提出する理由であります。
 以下、その内容の大略を申し上げますと、第一に、歯科衛生士になろうとする者は、都道府縣知事の免許を受けなければならないこととし、免許は、文部大軍まだは厚生大臣の指定した学校、養成所等を卒業した者であつて、さらに厚生大臣の行う歯科衛生士試驗に合格した者に対してこれを與えることとしております。第二に、歯科衛生士の業務は歯石の除去、予防のための薬剤の塗布等予防上の一定の措置のみに限られ、しかも、その業務を行うにあたつては歯科医師の直接の指導下においてすることを要し、独立してはその業務をなし得ないことにしております。
 右のうち、医師法案ほか三案は六月二十一日、医療法案は二十三日、本委員会に付託されたのでありますが、それぞれ関連性を有するがため、一括して二十四日よわ審議に入り、連日熱心なる質疑應答が交されたのでありますが、以下、そのおもなるものについて申し上げます。
 第一に、保健婦、助産婦、看護婦に対し相当高度の基礎的教養が要求されているが、これがため保健婦等の敬に不足を來すおそれはないかとの質問に対しては、本法律案施行の時期についてそれぞれ経過的規定があるのみならず、從來の保健婦等は、今後もその業務を継続することができるのであるから、ただちに数的不足を告ぐるようなことはない。
 第二に、医療費の軽減と大衆の衛生知識の向上をはかるため医師の処方箋交付を養務制とする意思はないかとの質疑に対しては、藥の内容を知りたい患者は処方箋交付を要求することができるのみならず、一面において、交付することが診療上特に支障ある場合もあり、事実問題としても事務的に困難が多いから、全面的に交付を義務制とすることは不適当に認めるとの答弁がありました。
 第三に、処方箋料を徴收することは、処方箋発行が医師の指導の一方法たる趣旨にも反するのみならず、医薬の任意分業を妨げることはないか、またたとい徴收するとしても、きわめて低額とすべきではないかとの質疑に対しては、処方箋料は理論的には一種の技術料で、診察料とは別個のものとも言えるが、事実問題としては外國立法例もあり、今後医療報酬審議会でその料金額について十分研究する方針であるが、社会保險診療報酬算定協議会できめておる処方箋掛額を標準とすべきものであるとの答弁がありました。
 かくて、二十八日討論に入りましたところ、全員一致原案に賛成いたしたのであります。次いで採決に入りましたところ、また全員一致原案通り可決すべきものと決した次第でございます。
 次に、國家公務員共済組合法案について申し上げます。
 現行の政府職員共済組合令は、昭和二十二年法律第七十二号により、暫定的に法律たる効力を認められておりますが、近くその期限が満了いたしますので、新たに共済組合の組織活動等を規律する統一的法律を制定せんとするのが、政府の本法律案提案の理由であります。
 まず、本法律案の内容について申し上げます。第一は、共済組合を法人として、権利義務の帰属を明確ならしめたのであります。第二は、組合の民主的運営をはかるため運営審議会を設けて、組合員をしてその運営に参加させる方法を講ずるとともに、給付の決定、掛金の徴收等につき異議がある組合員の苦情を処理するために、共済組合審議会を設けておるのであります。第三は、組合の給付でありますが、現在はその種類や額が組合により異なつておるのを、法律によつてこれを統一したほか、健康保險法、厚生年金法の改正と実質的に権衡をはかり、またやむを得ない欠勤の場合に、俸給に代る手当として、新たに休業手当金を設けておるのであります。第四は、國庫負担金の割合を社会保険と同様として明確にするとともに、組合の事務に要する費用は國庫が全額負担いたしておるのであります。第五は、恩給法の適用を受ける公務員については、退職給付等、恩給法改正の際考慮することとして、当分の間はこの給付は行わないことといたしておるのであります。
 本法律案は、六月十八日厚生委員会に付託せられ、二十六日から審議に入つたのでありますが、二十八日、討論を省略して採決にいたしましたところ、全会一致原案通り可決すべきものと決した次第であります。
 次に、理容師法の一部を敗走する法律案について申し上げます。
 現行理容師法によれば、理容師免許を得る資格としては、厚生大臣指定の養成施設において修業した者と試驗に合格した者との二本建でありますが、ややもすれば弊害の件うおそれある試驗制度を廃止せんとするのが、本改正法律案提案の理由であります。
 本法案のおもなる点を申し上げますれば、第一は、免許を受くる資格として、從來の理容師試験制度を廃止して、厚生大臣指定の理容師養成施設において一年以上修業した後、さらに一年の実地修練を経ることといえしたのであります。第二は、厚生大臣が養成施設を指定する場合の諮問機関として理容師養成施設指定委員会を設けたのであります。第三は、從來の試験制度は、六・三制の学校制度が完備されるまでの期間、経過的にこれを認めておるのであります。
 本案は、六月二十五日本委員会に付託され、榊原委員より提案理由の説明があつた後、質疑應答にはいつたのであります。審議の進行に伴い、田中、山崎両委員より次の修正意見が提出せられたのであります。すなわち第一は、最近の立法例に鑑み、第四條の理容師養成施設指定委員会を理容師養成施設協議会に改めること。第二は、國民学校高等科卒業者で徒弟見習中の者に対する特例を規定する第二十一條及び第二十二條は、政府挺出の理容師法特例案を重複するため削除すること。第三は、厚生大臣の指定する養成施設の普及状況に鑑み、学校教育法第四十一七條に規定する者に対して、昭和二十八年六月三十日まで從來の試驗制度を認めることの三点でありますが、これに対しては、提案者を含めて全員異議なく修正に賛成いたしたのであります。
 かくて、二十八日討論を省略してまず修正案について採決に入りましたところ、全員一致これに賛成いたしました。次いで修正部分を除く原案の他の部分について採決に入りましたところ、これまた全員一致原案通り賛成いたしました。すなわち、本法律案は全員一致修正可決すべきものと決した次第でございます。
 次に、予防接種法案について申し上げます。
 わが國の傳染病発生の趨勢は、戰争末期より逐増の傾向にありまして、終戰後の社会的混乱に伴い、昭和二十年、二十一年と引続き傳染病の爆発的発生と蔓延を惹起いたした次第でありますが、國民をしてこれら疾病の災厄より免れしめ、その発生による傳染のおそれのある疾病に対して、学界において疫病の効果を確認されたる免疫源による予防接種を全面的に実施し、もつて疫病予防の完璧をはからんとするのが、これが政府の本法律案提出の理由であります。
 次に、この法案の内容の大体を申し上げます。第一に、定期の予防接種を行うものは、痘瘡、ジフテリア、膓チフス、パラチフス、百日せき、結核であり、臨時に行うものは、以上の疾病のほか、発疹チフス、ペスト、コレラ、狸紅熱、インフルエンザ及びワイル病といたしておるのであります。第二に、予防接種を行う義務者を市町村長とし、市町村長は保健所長の指示を受けてこれを行うこととしております。第三に、厚生大臣は必要があると認めるときは、都道府縣知事に命じて臨時に予接防種を行わせることができることといたしたのであります。第四に、都道府縣知事も、疾病蔓延防止のため必要があると認めるときは、同じく臨時に予防接種を行い、または市町村長に行わせることができるようにいたしております。第五に、予防接種を受けた者に対して証明書を交付し、市町村においても台帳を作成し、これが記録を明瞭ならしめ、実施の確実を期したのであります。
 本法律案は、六月二十三日本委員会に付託せられ、二十七日審議にはいつたのでありますが、二十人日、討論を省略して採決に入りましたところ、全員一致をもつて可決すべきものと決した次第でございます。
 次に、優生保護法案について申し上げます。
 現行の國民優生法は、戦時國策、の一立法として、入口増権政策の基調に立つもので、戦後の変貌した社会的環境を考慮するときは、國民素質の向上策についても新たな発足をすることが必要なのであります。すなわち、悪質な素質の遺傳による國民資質の低下を防止すべきはもちろんのことでありますが、さらに進んで母性の生命、健康保護の見地から、優生手術の対象範囲を拡張するとともに、ある程度の人工妊娠中絶を認めんとするのが、本法律案提案の理由であります。
 次に、本法律案が從來の国民優生法と異なる点を申し上げますれば、第一、悪質疾病の遺傳防止と母性保護の立場から、一定範囲のものには任意に断種手術を受け得るようにしたこと。第二、強度の遺傳性精神病その他悪質遺傳者の子孫の出生を防止するため強制断種手術を行い得る制度を設けたこと。第三、悪質疾病を有するものが妊娠し、または妊娠分娩によりて母体の生命を危險に陥らしむるおそれがある場合は、医師の判定によつて妊娠中絶を行い得ること。第四、妊娠によりて母体の健康を害し、または暴行強迫によつて妊娠したる場合は、地区優生保護委員会の決定によりて妊娠中絶を行い得ること。第五、妊娠中絶手術の実施について指定医師制度を設けたること。第六、三種類の優生保護委員会をつくり、地方委員会は強制断種手術の判定にあたり、中央委員会は地方の興定に対し不服あるものの訴願を審査し、地区委員会は人工妊娠中絶手術の適否の決定に当らしめたること。第七、各府縣に優生結婚相談所を設けて、優生保護の見地から結婚の相談に應じ、不良子孫の出生を防止するとともに、地方人士に対し優生の知識、避妊器具の撰択、受胎調節の方法等の理解に努めしむることといたした等の諸点であります。
 本法律案は、六月二十三日本委員会に付託せられ、二十七日より審議に入り、二十入日、討論の後採決に入りましたところ、全員一致原案通り可決すべきものと決した次第でございます。
 以上諸法案の審議に関しては、いすれも政府との間に熱心なる質疑應答があつたのでありますが、その詳細は会議銀について御承知くださるよう御願いいたします。以上、御報告申し上げます。
○議長(松岡駒吉君) 右九案を一括して採決いたします。九案中、理容師法の一部を改正する法律案の委員長報告は修正でありまして、その他の八案の委員長報皆はいずれも可決であります。九案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて九案は委員長報告の通り決しました。

昭和23年6月30日 参議院 厚生委員会=省略

昭和23年7月01日 参議院 本会議録より

○議長(松平恒雄君) 日程第六、医師法案、日程第七、保健婦助産帰看護婦法案、日程第八、歯科衞生士法案、日程第九、歯科医師法案、日程第一〇、医療法案(内閣提出、衆議院送付)以上五案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長塚本重藏君。
   〔塚本重藏君登壇、拍手〕
○塚本重藏君 只今上程されました医師法案、歯科医師法案、保健婦産婦看護婦法案、医療法案及び歯科衞生士法案の厚生委員会における審議について、一括してその経過並びに結果を御報告申上げます。
 以上のうち医師法案、歯科医師法案、保健婦助産婦看護婦法案及び医療法案はいずれも戰時中の立法である國民医療法を解体し、それぞれ独立の法律としたものでありまして、その内容は次の通りであります。
 一、医療法案及び歯科医師法案は医師、歯科医師の身分法ともいうべきものでありまして、その業務内容の異なるに從つて別個の法律としたのでありますが、一面又この両者は密接な関係があり、從つて両法案の内容は大体においてその揆を一にして、医師及び歯科医師の職分、免許、試驗、業務等を規定しております。その内容は概ね現行の規定を踏襲しておりまして、これと異る点は、免許の取消、業務の停止等の手続を民主的にしたこと、医師が歯科医業を行うことを禁止したこと、処方箋の交付について若干の修正を加えたこと等であります。
 第二に、保健婦助産婦看護婦法案の内容は、作年七月政令第百二十四号保健婦助産婦看護婦令と殆んど同樣であります。この政令は現行の省令である保健婦規則、助産婦規則及び看護婦規則とは相当異つた画期的なものでありまして、その最も重要なる点は、これらの免許を受ける資格を粗当高め、原則として、いずれも大学程度の学校又は講習所を卒業し、更に国家試驗に合格した者に厚生大臣が免許を與えるようになつておるのであります。但し看護婦につきましては、一挙に資格を高めるときには、必要数を充し得ない虞がありますので、これを甲種と乙種の二種を設け、大学程度の教育を要する甲種看護婦の外に、新制中学校卒業後二年の教育による乙種看護婦を併置し、その業務について若干の制限を加えておるのであります。
 第三、医療法は、医療関係者の身分的事項を除いたその勉の医療に関する事項を内容としておるのでありまして、病院の差益を引上げて二十床以上としたこと、診療所には原則として四十八時間以上患者を收容することを禁じたこと、助産婦の管理する助産に関する施設はこれを助産所とし、收容人員をも制限したこと、新たに綜合病院の制度を設けまして、公的医療機関の整備に関する規定を設けたこと、並びに廣告に関する取締規定を明確にしたこと等をその主要なる内容としておるのであります。
 第四に歯科衞生士法案は我が國においては全く新らしいものでありますが、我が國は比較的歯科疾患が多く、而もこの予防を行うためには、現在の歯科医師の数は余りにも少数でありまするので、この欠陥を補うために、歯科医師の指導の下に專ら予防処置を行うことを業とする者として歯科衞生士の制度を設けようとするものでありまして、歯科衞生士の試験、免許、登録等の身分に関する事項及びその業務に関する事項を法案の内容といたしておるのであります。
 以上の五つの法案は六月の二十二日本委員会に予備審査付託となりまして、六月の二十四日、三十日の両日に亘つてこれを一括して審議に入つたのであります。その審議におきまする質疑應答の主なるものを一二申上げまするならば、第十九條の医師の應診義務規定にこの罰則のないのはどういうわけであるか、應診の義務を規定しておりながら、その義務を履行しない者に対する罰則規定があつてよいのではないか、この問に対しまして、政府は、医師の應診義務については医師の自覚に待つことを適当としたのであつて、たまたま違反者があつた場合には行政処分によつてこれを取締りたいという答弁がございました。又第二十二條の処方箋交付に関する規定が、現行法と表現の異つている理由はどうであるか。これに対して処方箋については、これを求められた場合には交付することを原則とする趣意をこれによつて明らかにしたのである。更に処方箋は無料で発行すべきではないかとの問に対しまして、純理論的には技術料として有料であるべきであると思うが、その適正な價格等については、尚十分に檢討して決定したいとの答弁がありました。
 更に歯科医師法案について、歯科医師が死亡診断書を交付し得ない理由はどういうわけであるかとの問に対して、政府は、歯科医師の素養は一局部に限定されており、死亡という全身的症状に対して的確な判断を下すことが不適当だからである。又助産婦保健婦看護婦法案については、助産婦の教育程度をこのように引上げると却つて数の不足を來しはしないかという問に対しまして、未だ若干の猶予期間もありまするし、その間に十分この法律の趣旨の徹底をせしめて、その人を得ることに努めたいとの答えがありました。又看護婦に二種を設けた理由は如何との問に対して、甲種看護婦二本にするのが理想ではあるが、日本の現状においてはにわかに多数を得ることは期待し得ないので、乙種看護婦の制度を併置したのであるとの答弁がありました。
 更に又医療法案につきましても、第一條第二頃の療養所の定義と第十三條の診療所收容制限との関係は如阿。これに対しまして、第一條の定義は、病院と診療所の定義を区別するために一應病床数で分けたのであつて、両者の本質的な相違はむしろその内容にある。診療所では原則として長期に入院を要する者は取扱わない建前で第十三條の規定を設けたのであると答えられました。又病院の規格が嚴格に過ぎて、却つて医療機関を減少させるような虞れはないかとの問に対しまして、そのようなことのないように運営において十分注意して行きたい。
 更に又歯科衞生士法案について、何故にこの法律を早急に設けなければならないのか、その理由が我々には了解ができない。これに対しまして政府は、國民に歯科疾患が多く而も歯科医師が少い現状において、この方面の專門家を養成することが是非必要であるからである。
 以上のような質疑應答があつた後論に入りました。一委員より、医療法の規定にある病院、診療所の構造設備は、現在の社会情勢から見て困難であるので、医療の圧迫にならないように注意し善処されたいとの希望があり、又診療所における四十八時間以上の收容禁止については、將來の問題として尚十分檢討の余地があるから、十分この点を考慮せられなければならない等の希望が附せられたのであります。そうして多くの人達が原案に賛成の意見を表明せられましたが、一委員より、医療法第十八條の「病院又は医師が常時三人以上勤務する診療所にあつては、開設者は、專属の薬剤師を置かなければならない。」という規定の中に「三人以上」とあるのを「二人以上」と改めること、並びに医師法、歯科医師法中の処方付箋交付の義務について「毎回」処方付箋を交付することを明らかにすることの二点の修正案が提出せられました。
 かくて採決に入りましたところ、修正案は提案者以外に賛成者はなく否決せられました。続いて原案について採決いたしましたところ、多数を似て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。以上御報告申上げます。(拍手)
○議長(松平恒雄君) これより採決をいたします。五案全部を議題に供します。五案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて五案は全会一致を以て可決せられました。

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Posted by 関組長 at 21:20